渋井残り50メートル差し切り初五輪/陸上

- 優勝しVサインでゴールする渋井。右は赤羽(撮影・田崎高広)
<陸上・日本選手権:女子1万メートル>◇決勝◇2日目◇27日◇川崎市等々力競技場
女子1万メートルは、渋井陽子(29=三井住友海上)が31分15秒07の大会新で優勝し、初の五輪切符をつかみとった。
Vサインをつくった右腕を突き上げ、渋井がゴールに飛び込んだ。汗にまみれたオンナの三つどもえ。残り半周で女王福士を置き去りにすると、最後は前を行く赤羽との一騎打ち。ラスト50メートルで並びかけ、歯を食いしばって胸を突き出した。「絶対に負けない」。着差は0秒27。3人で最年長の29歳が、執念の分だけ上回った。勢いのまま観客席の応援団に駆け込み、五輪内定の喜びにひたった。
得意の先行逃げ切りではなく、スパートが光った。「中国で秘密特訓してきたから」とニヤリ。同タイムで2位に敗れた4月の兵庫リレーカーニバルの教訓から、20日まで行った昆明合宿でスピード練習に明け暮れた。坂道ダッシュに短距離走。渡辺監督によると、100メートルで14秒台をマークするまでになったという。この日はライバル2人の後方につき「2人の(筋肉の)乳酸のたまり具合が見えた」。自信があるから冷静に、仕掛けどころを見極められた。
ついにつかんだ五輪への切符。昨年11月の東京国際で7位と惨敗してマラソンで夢破れても「五輪に出たい」と鈴木総監督に直訴した。ささげたい人がいた。4月26日に他界した祖父金蔵さんだ。亡くなった翌日のレースでA標準を突破して、葬儀に駆けつけた。棺には「渋井、五輪へ前進」と書かれた新聞を入れた。
いつもテレビ越しに応援していた金蔵さんは、渋井が負けそうになると即座に電源を切っていたという。「北京では周回遅れだけはイヤ。食らいついていきたい」。天国のおじいちゃんに、最後まで勇姿を見せるつもりだ。【太田尚樹】
[2008年6月28日8時46分 紙面から]
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