小林祐梨子5000m涙の五輪切符/陸上

- ガッツポーズでゴールする小林祐梨子。後方は手前から赤羽、福士
<陸上・日本選手権:女子5000メートル>◇決勝◇最終日◇29日◇川崎市等々力陸上競技場
19歳の小林祐梨子(豊田自動織機)が涙の五輪切符だ。女子5000メートルで女王福士加代子(26)や2冠を狙った渋井陽子(29)ら強敵を破り、15分11秒97で初優勝。北京五輪代表に内定した。女子トラック種目で10代の五輪代表は64年東京五輪400メートルの小川清子ら以来44年ぶり。昨年1年間の苦闘を乗り越え、兵庫・須磨学園高3年の時に1500メートル日本記録をマークした逸材が見事に復活した。男子400メートルでは金丸祐三(20)が代表に内定。元「スーパー高校生」の2人がそろって北京へ駒を進めた。北京五輪代表は30日に発表される。
小林のほおをぬらす雨に、大きな両目からこぼれ落ちた大粒の滴が加わった。去年とは違う、歓喜の涙。両手を力なく上げてゴールした瞬間は「終わった、というだけ」。北京行きを決めた実感は、大歓声を聞いてようやくわいてきた。優勝インタビューで祝福されると、両手で顔をおおって号泣した。
5000メートル出場3回目の19歳が、強烈なスパートで渋井、福士、赤羽の3強を置き去りにした。終盤まで「20回ぐらい前に出ようと思った」のを我慢。残り500メートルで「もう行っちゃえ」と覚悟して先頭に出ると、ラスト1周は66秒4。1万メートルの上位3人が誰もついていけなかった。女子トラック種目で10代の五輪代表は44年ぶりの快挙だ。
元祖「スーパー高校生」の復活だ。須磨学園高3年の06年に1500メートルで日本新をマークして一躍注目を浴びたが、卒業後の07年に暗転した。実業団登録問題で大好きな駅伝に出られず、右かかとを痛めて世界選手権の代表も逃した。夢にまで見た大舞台は、自腹でチケットを買って観戦。観客席で「私は何をやってるんやろう」と自分を責めた。直後の米国ボルダー合宿では1カ月間、初めての自炊生活を送った。姉佳代さん(21)に頼りきりだった日々から“独り立ち”するためだった。
今大会は同日に決勝が重なった1500メートルを欠場して、A標準を破っていた5000メートルに専念した。11歳の夏、シドニー五輪女子マラソンで優勝した高橋の映像は今もまぶたに焼き付いている。翌01年に陸上を始めてからの夢舞台に立つため、あえて本職をあきらめた。苦難を乗り越え、少女は大人になった。「日本でトップになるためにやってるんじゃない。五輪は出るだけじゃダメ。まず決勝まで進みたい」。涙の乾いた瞳で、さらに上を見つめた。【太田尚樹】
[2008年6月30日9時55分 紙面から]
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