“空飛ぶ”ゲイ9秒68人類最速だ/陸上
<陸上:全米選手権兼北京五輪代表選考会>◇3日目◇29日◇米オレゴン州ユージン
世界王者のタイソン・ゲイ(25)が、驚異的なスピードを見せた。男子100メートル決勝で9秒68をマーク。追い風(4・1メートル)参考記録ながら、ウサイン・ボルト(21=ジャマイカ)が5月末に出した9秒72の世界記録を上回った。風の助けを借りたとはいえ、人類史上最速で100メートルを駆け抜け3連覇を達成。8月16日の北京五輪本番に向け、短距離王国米国の最強スプリンターが実力をアピールした。
ゲイの体が、飛ぶようにゴールを駆け抜けた。スタートから飛び出した。ゴールへ向かって吹く強い風に乗ってグングン加速した。9秒68。ボルトの世界記録を0秒04上回るタイムに、場内が沸いた。公認範囲となる2メートルを超す追い風4・1メートル。大歓声は落胆のため息に変わったが、ゲイは満足そうに両手を上げ、2位のディクスと抱き合った。
「風がどうであれ、自分の体がそれだけ速く動いたことがうれしい」。96年にトンプソン(バルバドス)が5メートル以上の風に助けられて記録した9秒69を上回る人類最速タイム。記録は公認されないが「スタートの時点で風が強いことは分かった。そのくらいの経験はあるさ」と気にする様子はない。「大きな意味のあるレースだった」。公認こそされないが、驚異的なタイムを出して胸を張った。
1カ月前、ニューヨークでのGP大会で世界記録を出したボルトに敗れた。9秒85の好タイムを出しながら2位に終わった。スタート技術の差を埋めるため、シドニー五輪400メートルリレー金メダリストのドラモンドコーチとともにスタートを修正した。「ドラモンドから9秒6で走れると言われていたんだ」。その通りのタイムで走りきった。
未知のスピードを体感して、ウィニングランでは足がけいれんしていた。それでも「気分は最高だ」と言った。この日、ジャマイカ選手権でライバルのボルトが短距離2冠を達成したが「大きなプレッシャーとは思っていない。ボルトは今でも世界記録保持者だし」と冷静に話した。「最高のコンディションは最後までとっておく。五輪への期待はとても大きいよ」。北京の金メダルが見えてきたゲイは、笑顔で言った。
[2008年7月1日8時47分 紙面から]
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