イケクミ涙の五輪切符/陸上

- 池田久美子は1回目に6メートル70を跳び、1人離れて涙をぬぐう
<陸上:南部記念>◇6日◇函館・千代台公園陸上競技場
イケクミが涙で五輪切符を勝ち取った。女子走り幅跳びの日本記録保持者・池田久美子(27=スズキ)が、1回目の跳躍で今季自己ベストの6メートル70で優勝した。6月の日本選手権で3位に終わり、「追試」となった最後の五輪代表選考会で、参加標準記録Aにあと2センチに迫る好記録を出して試合中に号泣。かつて天才少女と呼ばれたジャンパーが、初の五輪出場権を獲得した。
166センチの体が、ふわりと浮いた。手応えがあった。着地の直後、池田は小さくガッツポーズをつくった。「6メートル70」。アナウンスを聞くと、芝の上でうずくまった。初めて試合中に泣いた。「訳が分からなくなりました。過呼吸みたいになって、心臓が(口から)出そうになりました」。
2回目は気持ちを落ち着かせるためにパスしたが、最初の好記録で優勝をもぎとった。6メートル70超えは昨年5月以来、422日ぶり。先月末の日本選手権は6メートル42の3位に終わり、すでに五輪A標準(6メートル72)を突破していながら、代表入りを見送られた。「追試」に備えて助走を18歩から20歩に戻すなど、1週間で修正してみせた。
都内の国立スポーツ科学センターで1人、泊まり込みで調整した。注意点を書いた自作ノートは、朝昼晩の食事の後や寝る前に読み返した。眠れない夜は宿舎の廊下を走って、不安を消した。5月の大阪GP後、99年の大学入学以来約10年も指導を受けた福島大・川本監督のもとを離れた。自立を目指し、戦い抜いた。
「五輪は池田家の夢でした。おじいちゃんが何かの縁で、ここを用意してくれたのかなと考えました」。祖父弥(わたる)さん(故人)は戦争で中止になった40年東京五輪の代表候補で本籍が函館。小学4年の時、祖父の偉業をたたえるという名目で新聞記者が家に来た。05年に他界した父実さんも幅跳びで全国レベルの元選手。記事の最後は「孫・久美子も伸びていくだろう」と締めくくってあった。「すごいうれしくて、頑張ろうと思いました」。幼少のころからの頑張りは、ついに結実した。
「足がもげてもいいと思った。自分のためじゃなく、応援してくれた人に、これで恩返しができます」。家に電話すると、母は泣いていた。96年アトランタ五輪も狙えるくらい早熟だった元・天才少女が、ついに夢舞台へたどり着いた。【佐々木一郎】
[2008年7月7日9時38分 紙面から]
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