福島成長力でつかんだ五輪切符/陸上

- レース後、笑顔を見せる福島千里(撮影・黒川智章)
<陸上:南部記念>◇6日◇函館・千代台公園陸上競技場
女子100メートルの福島千里(20=北海道ハイテクAC)が代表に追加され、同種目で56年ぶりの五輪出場が決まった。
吉報は、突然やってきた。福島は帰り支度を整え、競技場を出ようとしていた。すると、新聞記者が、1枚の紙を持って走ってくる。一覧表には、自分の名前があった。「ウソでしょ! ドッキリでしょう?」。ウソではない。メディアに囲まれ「(両親に)報告したら、心臓が止まっちゃうんじゃないかな」とおどけてみせた。急きょ、記者会見が設定され「びっくりです」を連発した。
4月の織田記念で11秒36の日本タイ記録を樹立し、五輪参加標準記録B(B標準)を突破。A標準まで、あと0秒04に急接近した。結局、この日も11秒49だったが、今季は1度も日本人に負けなし。高野強化委員長は「今すぐ入賞を望むのは厳しいが、新しい時代を切り開いてくれる選手」と話し、福島の良さを「地面反力の効率がいい。だから、体を前に運ぶ推進力がある」と説明した。
五輪の女子100メートルに日本人が出場するのは、52年ヘルシンキ大会の吉川綾子以来、56年ぶり。スターティングブロックはなく、地面を掘って、足の位置を固定していた時代。「中学の卒業アルバムの中に、3年間の出来事として高橋尚子さんの金メダルが載っていた」という20歳の福島に昔話は、ピンとこない。しかし、中村監督は当時のレース写真に見入り、吉川さんの近影を取り寄せるなど、歴史の重みを実感していた。
屋根付きの130メートルトラックで雪国ながら、冬場も走れる環境に恵まれるなど、強さの秘密は少なくない。しかし、食べ物の好き嫌いも多く、腕振りも将来的には修正が必要な未完成スプリンター。その分、伸びしろは限りない。「北京で? これから考えます。まず、実家に帰りたい」。今季前、チームメートとサインを考えた。昨季までは1度も書いたことがなかったが、この日は中高生が列をつくった。想像以上のスピードで、五輪への階段を駆け上がった。
[2008年7月7日8時8分 紙面から]
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