たぐいまれなコートビジョンで、司令塔ジェイソン・キッド(マーベリックス)は長年、「リーグ最高のPG」として君臨してきた。他のPGと決定的に違うのは“一緒にプレーするチームメートをみな、ベターにする”という点だ。PGにゲームメークを一任し、好きにやらせる戦術であればあるほど、キッドの才能は最大限に表現される。

- ラスベガスのバレー高校での米国バスケット代表チームの練習に参加するジェイソン・キッド(AP=2008年7月22日)
頭の後ろに目がついている
01-02年には、移籍前とほとんどメンバーの変わらなかったネッツを、ドアマット(最下位チーム)から一気にNBAファイナルへと押し上げた。ネッツのメンバーは、キッドが今季、マーベリックスに移籍する直前まで、こう口を揃えていた。
「キッドとプレーすると、本当に楽なんだ。自分の前に、実にタイミングよく、『はい、どうぞ』と、シュート・チャンスを用意してくれる。それどころか、その辺のPGなら、決して得点チャンスとはならない場面でも、彼のマジックにかかると、さらっと変わってしまうんだよ」と言い続けたものだった。
高いレベルとは言えない選手でも、キッドと一緒にプレーすると、半年でNBAでシュート成功率トップの選手になってしまうのだ。米国代表には、シドニー五輪以来の復帰。昨夏、ラスべガスでの北京五輪米大陸予選で、レブロン・ジェームズ、カーメロ・アンソニー、ドワイト・ハワードら2006年世界選手権を戦った者たちは、キッド加入をこう言って歓迎していた。
「実に、実に、楽なんだ。そして、『ジェイソンは、頭の後ろに目がついている』というのも本当だった。予想できないところで、絶妙にいいパスが飛んで来ることに、慣れなきゃいけないんだけど」(アンソニー)。
また、キッドは「ミスター・トリプル・ダブル」のニックネームでも知られる通り、PGながら、実によくリバウンドをとることでも有名だ。今の米国代表チームのプレーイングスタイルは、アップテンポのランニング・バスケットボールがメーン。トランジション・オフェンスの場面をクリエイトするため、キッドが積極的にディフェンス・リバウンドに参加する場面が、北京でも見られることになるだろう。

- マカオでの練習中、マイク・ダントニアシスタントコーチ(右)と談笑するジェイソン・キッド(AP=2008年7月29日)
影のキャプテンが頂点へ導く
更に、常に冷静で威厳があり、目だけで言うことを聞かせてしまうリーダーシップが、代表チームでも発揮されている。各国のコーチ陣、メディアたちも、キッドの存在感をあらためて感じたようで、口々に「今回の影のキャプテンはキッドだ」とささやいている。
キッドは今回の米国代表チーム内で唯一、既に五輪金メダルを持っている。シドニー五輪のものだが、「シドニーでの金メダルは、家に置いて来た。みんなを鼓舞するために持って来ようかと、一瞬考えたが…。でも、僕が今欲しいのは、北京での金メダルだからね」。
今までキッド自身が参加した世界大会では、無敗の38連勝。すでに全盛期は過ぎた35歳。だが、北京五輪では、その経験と落ち着いたリーダーシップを発揮し、若いチームをさらに飛躍させてくれることに大きな期待がかかる。
ジェイソン・キッド

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新人王、オールスター9回選出、NBAファイナル進出2回、トリプルダブル歴代3位と、輝かしいキャリアを誇る、歴代屈指のポイント・ガード。得点型ではないのに、そのたぐいまれなコート・ビジョンの広さ、“針の穴を通す”と言われる幾何学の天才かのようなトリッキー・パスで、観衆を湧かせる希有なプレーヤー。常に冷静で、目だけでものを言わすその威厳には、“闇将軍”との異名もとる、いまやNBAのゴッドファーザー的存在。
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