このページの先頭




コラム


世界最速の中国版新幹線 速いんだけど…

2008年8月11日

 開幕1週間前に鳴りもの入りで開業した、中国版超高速新幹線「京津城際鉄道」に“体験乗車”した。鉄道営業速度で世界最速とされる時速350キロを出し、北京-天津間(約120キロ)をわずか約30分。静かで安定感もあり快適。しかし、始発の新駅・北京南駅の周囲は工事中の現場だらけで、行きにくく空気が汚い。鉄道テロを警戒した自動小銃片手の武装警察が多数目を光らせ、まるで戒厳令下。速すぎて、乗客全員に水を配り終える前に終点に着いてしまうなど、五輪に合わせドタバタデビューしたような印象もあった…。

2等車900円

 スピードも速いし、到着までの時間も早かった。北京南駅を出て、約120キロ離れた終点天津まで約30分。車内では飛行機のごとく、若い美女乗務員2人が乗客全員に水のボトルを配るサービスをした。しかし、全員に配り終えるより早く、列車は天津駅に着いてしまった。そのため、美女2人はあわてて、残りの乗客に“バナナのたたき売り”のごとく、次々放り投げるようにして水を配りだした。このシーンが、鉄道の超高速ぶりと“ドタバタ開業”を同時に象徴していた。

%E5%BA%83%E9%83%A811-2.jpg
美女乗務員2人が水を乗客全員に配ろうとしたが、到着までの時間が早すぎて配り終える前に終点についてしまった

 京津城際鉄道は、五輪開幕1週間前の1日に開業した。始発の新駅「北京南駅」から終点天津駅まで体験乗車してみたのは3日。白を基調とした流線形ボディーの8両編成「和諧号」。「1等席」(料金69元=約1080円)と「2等席」(同58元=約900円)の2種類。2等席に座った。
 計約610の座席はほぼ満席。新幹線「のぞみ」並みの静粛性で加速していく。周囲が農村地帯の風景に変わってきたころ、車両内の電光表示が「時速250キロ」突破。ぐんぐん速度を上げ、発車から十数分後にはついに最高速度の「350キロ」という表示が出た。

%E5%BA%83%E9%83%A811-3.jpg
走行中、車内の電光掲示板には最高速度「350キロ」が表示された

単調な景色

 景色はえんえん一面の畑で単調。ただ振動や騒音もほとんどなく、安定感もあるため快適だ。全8両の中には洋式便所や食堂車も完備。減速を始めたかと思ったら、あっという間に天津の街並み。天津には五輪のサッカー会場がある。
 開幕に合わせ、強引に開業に踏み切った印象もあった。まず北京南駅に着くまでが大変だった。タクシー運転手が、この新駅への行き方を把握していなかったため、「ここから歩いてくれ」と、駅の裏側の路地で降ろされた。駅周囲はがれきの山が続く工事現場ばかり。土ぼこりや粉じんが舞い続ける“大気汚染エリア”を駅に向かってさまよい、ノドがおかしくなった。
 駅に徒歩で直接近づけるルートも限られており結局、近くのポイントから、立ち客で超満員の専用シャトルバスに乗って“ピストン輸送”された。完成したばかりの北京南駅は近代的で、巨大なホールがあり、ホームは23番線まで。設備は空港並みだが、「鉄道テロ」を警戒してか、超厳戒態勢も空港並みだった。

%E5%BA%83%E9%83%A811-5.jpg
新駅「北京南駅」には自動小銃を持った警察官が多数目を光らせ戒厳令下のような物々しさだった

車内は快適

 荷物検査はもちろん、駅周辺には自動小銃を構え、目を光らせた武装警察が多数おりピリピリムード。公安車両もテロ現場のごとく、至るところに駐車し監視中。乗客の中国人男性(28)は「中国の威信をかけた鉄道だから、テロの標的になりやすく、少し怖い。駅はきれいだが、駅に着くまでがすごく不便。構内もペンキのようなにおいが残っているし、周囲は工事現場だらけで空気が汚い。中国一快適な鉄道に乗るのは、結構大変だ」と話した。
 乗り方を聞くと「今日ここに来たばかりだから知らない」と事前研修不足を露呈する返答をした係員も複数。実際、料金は開業1週間前でも公表されず、試運転期間もわずか1カ月。不安の声も出ていた。
 せめて列車内だけは快適にと、天津から北京に戻る列車では、奮発して1等席に乗った。ウトウトして目を覚ましたらもう、北京南駅。少なくとも乗り心地だけは抜群だ。

%E5%BA%83%E9%83%A811-1.jpg
北京南駅のホームでは「和諧号」の記念写真を撮る中国人が多かった

上海まで延長予定

 京津城際鉄道は通称「北京-天津高速鉄道」などとも呼ばれる。列車はほぼ15分おきに出発し、1日あたり片道47便前後が走る。時速350キロは、リニアモーターカーなどをのぞき、鉄道路線の営業速度としてはフランスの鉄道「TGV」を抜いて世界最速とされる。総工費は約200億元(約3100億円)。車両は、日本の東北新幹線「はやて」をベースにしたタイプと、ドイツのシーメンス社の技術を応用したタイプの2種類ある。10年の上海万博にむけ今後、上海まで延長する予定。

広部玄(ひろべ・げん)

 1970年生まれ。早大政経学部卒。編集局整理部などを経て、95年から文化社会部で社会、芸能など担当。裏社会ネタ、異常性犯罪、オウム関連、ライブドア・株関連、アイドル関連、格闘技マニアック情報などがやや得意。01年からの連載「広部が行く」はまったく惜しまれることなく03年ごろ自然消滅。それ以外のこれまでの連載は「広部玄の株やっちゃうぞ」「広部玄のイケイケ(アテネ五輪)」「ニッポン珍事情(←記憶している国民は推定3人以下)」「広部玄の先モノ買い」(←同推定2人以下)「見た・聞いた・思った」(←約半年で事実上解任)「広部玄の勝手にアイドルカウンセリング」(←最近著しく頻度が落ちている)などがあったが、あとは忘却。07年の小島よしお肯定派。




ここからフッターエリア


nikkansports.comに掲載の記事・写真・カット等の転載を禁じます。
すべての著作権は日刊スポーツ新聞社に帰属します。
(C)2017,Nikkan Sports News.