150まで怪物リード、悔いなし引退戦
2008年8月13日
競泳男子200バタ 柴田隆一(24)
騒然とする超満員の観衆の視線は、フェルプスではなく柴田に向けられていた。「誰だあれは」。50メートル通過から始まった一人旅は、150メートルをターンするまで続いた。一時は体1つ以上リードした。明らかな飛ばしすぎだったが、いけるところまでいった。終盤にフェルプスだけでなく、他の選手にもごぼう抜きにされた。自己ベストよりも1秒以上も遅い1分56秒17。この組7位にまで沈んだが「悔いはないです。これ以上は出せないです」と、はっきり答えた。
引退レースだった。4月の日本選手権で優勝し、五輪出場権を獲得した時から「オリンピックが現役最後の試合」と公言。退路を断って、初出場の夢舞台にかけてきた。だから先行逃げ切り」という偽りのない自分を出したかった。日本選手権は勝負に徹して、周囲の出方をうかがう後方待機。優勝したが納得できなかった。この日は「余裕はなかったけど、逃げるしかなかった」と振り返った。
「もう1人僕がいたら、僕自身『何だこいつ』と思うはず」と自認する個性派。人と接するのは、得意ではない。大事な大会前は、外部情報を一切断って集中する。今回は携帯電話もパソコンも持ってこなかった。調整も、多くの選手が米アリゾナ州で合宿する中、倉沢コーチとマンツーマンで沖縄合宿。玉砕覚悟の先行逃げ切りではなかった。水中でも周りに合わせず自由にいたかった。「今後は未定ですが、競技は引退します」。世界一の怪物に挑んで敗れた表情は晴れやかだった。

- 200メートルバタフライ準決勝で全体の13位に終わり、決勝進出を逃した柴田(共同)



