事故死の弟に金捧げられず
2008年8月15日
競泳女子200バタ イエジェイチャク(24)
負けて当然のタイムだった。決勝のイエジェイチャク(24)は自己ベスト(2分5秒61)よりも1秒以上遅い2分7秒02。驚異的な世界新で1、2位を独占した中国勢、前世界記録保持者となったシッパー(オーストラリア)に次ぐ4位に終わった。4年前、アテネで金メダルを輝かせていた表彰台にも立てなかった。
天国と地獄を味わった。母国ポーランドの競泳で初めて金メダルを獲得したが、アテネ大会後すぐに金メダルをオークションにかけて売却した。落札金額8万ドル(約880万円)は白血病の子供たちのため、国内の医科大にすべて寄付した。国民的な英雄となった女王だったが、その翌年、悲劇に見舞われた。
05年10月、ワルシャワ郊外で交通事故を起こした。自ら運転した車で前方の車を追い抜く際、スリップで反対車線外に飛び出した。道路横の木に激突し、同乗の弟シモンさん(享年19)を死亡させた。裁判で270時間の社会奉仕活動を命じられる有罪判決を受けた。同国競泳関係者は「彼女の落胆は相当なものだった」と明かす。弟のためにも、と約半年後に復帰。同年と07年の欧州選手権で連覇し、今五輪で亡き弟に金メダルを贈るはずだった。
五輪直前は富山県内で合宿した。07年世界競泳で優勝した際にも使用したプールで最終調整して縁起を担いだ。「今年は良い記録を出した選手が多いから」と厳しい決勝を覚悟していたが、皮肉にも悪い予感は的中した。レース終了後、イエジェイチャクの表情にはやり切れない無念さがにじんだ。



