感謝のゴール そして再スタート
2008年8月25日
男子マラソン 佐藤敦之(30)
日本選手団最後の出場選手が「鳥の巣」に入ってきた。すでに金メダルの瞬間から30分以上が経過。男子マラソン最後のランナーでもあった。足取りは重い。サングラス奥の瞳もうつろ。それでも、佐藤は最後の力でゴールにたどり着いた。「どんなことがあっても完走したかった」。天国から見守る母と、観客席から見詰める妻のために-。
3年前、母美枝子さん(享年54)をがんで亡くした。栄養士の資格を持ち、食事バランスを考えた料理で育ててもらった。告別式で棺を前に誓った。「お母さん、僕は北京に絶対に行くから見ていてください」。
昨年7月には800メートル日本記録保持者の美保(旧姓杉森)と結婚。自分を追い込みすぎて失敗してきた男は「2人なら笑っていられた」という。余裕ができた。昨年12月の福岡国際で3位に入り、五輪切符を手にした。だが、妻は参加標準記録を突破できず「夫婦で五輪」はかなわなかった。
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- 最終ランナーでトップから30分以上遅れゴールに向かう佐藤(撮影・宇治久裕)
絶好調にほど遠かった。序盤10キロで脱落。完走者中最下位の76位。2時間41分8秒のタイムは、女子の中村よりも遅かった。
ゴールした佐藤は静かに帽子とサングラスを外すと、観客席へ深々と頭を下げた。「お世話になった人に感謝を伝えたかった。これから再スタートです」。日本選手団の最後を飾るにふさわしい、ひたむきな敗者の姿だった。【太田尚樹】



