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コラム


金か夢か…過酷な競技

2008年8月19日

 とんでもない競技だと思う。遠泳とロードレースとマラソン。3つの異なる競技を一緒にやろうというのは、その1つも満足にできない身としては考えもつかない。しかし、大変なのは試合や練習だけではない。競技をやることよりも、続けることの方が難しい。資金的に恵まれないのだ。

 近年のフィットネスブームで競技を楽しむ人は増えたという。しかし、競技として人気が定着しているとはいえない。五輪代表はみなプロだが、賞金も決して高くなく、生活は楽ではない。「スポンサー探しとか営業活動の方が大変なんです」。80年代に創生期のプロとして活躍し、井出をこの世界に誘った「チーム・ケンズ」の飯島健二郎監督は笑いながら言った。

 この日3人とも好成績を残した女子は、選手層も厚くなった。井出や上田は、陸上の実業団チームからの誘いを「五輪に出たい」と断ってトライアスロンを選んだ。実業団で駅伝などを走れば、収入には困らない。しかし、五輪は難しい。だから、金銭的に恵まれなくても夢に近い道を選んだのだ。一方、男子は現実の壁にぶつかり、実業団を選ぶ選手が多いという。

 19日に出場する田山はトライアスロンを選んだが、五輪出場決定後の今春、所属チームが解散する苦難に直面した。個人的には所属先が決まったものの、一緒に練習をしてきたコーチや選手たちは明日が見えない。「スポンサーを探すためにも、北京で結果を残さないと」。田山は悲壮な決意でスタートする。

 同じ五輪競技でも、その環境は大きく違う。恵まれない環境を変えるきっかけになるのが、五輪での結果だ。好成績をあげれば注目される。人気が出ればスポンサーもつく、競技人口も増える。好循環を呼べる可能性もある。マイナーと言われる競技の選手たちには、その競技の未来もかかっている。

荻島弘一(おぎしま・ひろかず)

 1960年(昭和35年)東京都生まれ。84年に入社、スポーツ部勤務。五輪、サッカーなどを担当し、96年からデスク。出版社を経て05年から編集委員として現場取材に戻る。




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