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コラム


準備があるから「運も実力」

2008年8月24日

 「運不運」で片付けるほど簡単ではないが、それでも「不運だな」とは思う。女子マラソンの野口に続いて、男子の大崎も欠場。故障しないことはいい選手の条件だし、周囲のプレッシャーに過度のトレーニングをした可能性もある。期待度から同列とは思わないが、事情はあったのだろう。

 4年間というスポーツ選手にとって決して短くない時間は、五輪のためだけにある。そのために努力し、泣き、笑う。代表に選ばれたら、五輪本番で最高のパフォーマンスができるように準備する。それが選手の責任であり、指導者の義務でもある。選んだ選手をベストの状態で送り出せず、その対応策もなかった日本陸連は、情けないとしか言いようがないが…。

 逆に男子400メートルリレーの銅メダルは、素晴らしい快挙だ。確かに、ラッキーだった。米国など上位が失格。ライバルが消えて3位に入った。もっとも、後に残るのは記録だけ。ラッキーだったという記憶は薄れても、トラック種目で日本男子初のメダルを獲得したという記録は永遠に残る。もともと、4年に1度しかない五輪だから、運と不運は付きものでもある。

 「運も実力」。よく聞く言葉だが、真実だと思う。リレーの4選手は徹底してバトン練習を繰り返した。雨でぬれたバトンを落とした米国が「不運」だとすれば、決してミスしないように雨中でも練習を積んできた日本に「幸運」が舞い込んだ。不断の努力と準備をした人間にしか、幸運の女神はほほえまない。

 「確かに、運はありました」。競泳の北島は、2個の金メダルを胸に言った。2冠に輝いたアテネ大会から、国内でも勝てないどん底を味わった。しかし、再び五輪に向けて調子を上げた。好調の波がピタリと合ったのは、幸運だったからだけではない。「金メダルへの強い思いがあった」からこそ、その思いに向けて万全の準備をしてきたからこそ、栄光を手に入れることができた。

荻島弘一(おぎしま・ひろかず)

 1960年(昭和35年)東京都生まれ。84年に入社、スポーツ部勤務。五輪、サッカーなどを担当し、96年からデスク。出版社を経て05年から編集委員として現場取材に戻る。




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