このページの先頭




コラム


悲しむチーム励ました中国人の「U・S・A!」

2008年8月12日

 「難しい試合だった」。9日深夜に行われた女子バレーボールの日本-米国戦後の会見。米国代表を率いる郎平監督は試合を振り返って言った。その顔は、勝者とは思えないほどに険しかった。冒頭の言葉が「柳本ジャパンに苦戦した」という意味ではないのは、隣にいた主将のオーモーサントスの泣きはらした目が物語っていた。

 試合直前、北京市内で男子米国代表監督の義父が中国人によって殺害されるというショッキングなニュースがチームに知らされた。現場付近には若者向けのカフェやバーが立ち並ぶ人気スポットで、僕も以前に現場付近を訪れたことがある。現場から会場の首都体育館までは車で約10分の至近距離だった。

 選手たちも動揺しただろうが、最もつらい立場に立たされたのは中国人でもある郎平監督だったのではないかと僕は思う。自分の母国の人間が、目の前にいる選手たちの知人を刺し殺した。悲しみにくれるチームにどんな言葉をかけて試合へ送り出すのか。頭と心を悩ませたに違いない。

 試合開始前のロッカールームで、郎平監督は選手たちに言い聞かせたという。「厳しい状況だけど、それでも試合は行われる。気持ちを強く持って、スピリットを見せなさい」。結果はご存じの通り、日本を3-1で下した。実力だけでなく気迫でも圧倒していた。

 指揮官の言葉に加えてチームを励ましたのは、中国人たちの大歓声だったと思う。「メイグオ、チャーヨー(米国、頑張れ)」の掛け声だけでなく英語で「U・S・A ! 」の大合唱まで起きたのには驚いた。郎平監督も「応援に助けられた。感謝したい」と礼を言っていた。ネガティブな話題が先行する今回の五輪で、少しホッとさせられる場面だった。【太田尚樹】




ここからフッターエリア


nikkansports.comに掲載の記事・写真・カット等の転載を禁じます。
すべての著作権は日刊スポーツ新聞社に帰属します。
(C)2017,Nikkan Sports News.