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コラム


劉翔の棄権が伝えたもの

2008年8月21日

 陸上男子110メートル障害の劉翔が、ケガでレースを棄権した。中国のスーパースターで、04年アテネ五輪金メダリスト。「大会の顔」のアクシデントに、中国が揺れている。

 劉翔の登場で、110メートル障害は、中国でメジャー種目になった。4月の陸上プレ大会でのこと。劉翔目当てに、国家体育場に観客が集結した。劉翔は、わざとらしく、フライング。ニヤリと笑い、観客はどよめいた。

 ジュニア時代から劉翔を知る日本代表の内藤は「パフォーマンスかも知れません。僕は、劉翔選手が、中国の人たちに何かを伝えようとしているように見えるんです」と話していた。陸上は、スタート前は静かにすることが観戦マナー。しかし、劉翔に熱狂するあまり「加油! 加油!」と騒がしかった。スタート前は、お静かに-。劉翔はそんなメッセージを伝えたかったのかもしれない。

 スーパースターの影響力は大きい。日本でも北島の活躍によって、平泳ぎは「メーン種目」になった。自由形などに比べて水の抵抗を受けやすく、ストロークが少ない方がロスが少ない。パワーだけでは勝てず、タイミングを取るバランスが大事。スポーツ好きなら、こんなうんちくを、北島を通じて知っただろう。

 内藤は北京五輪でのレース後「110メートル障害の選手というだけで、中国の人たちは温かいんです」と話した。その感じ、なんか分かる気がする。

 劉翔ショックは、中国でまだ収まらない。同情も、厳しい意見もある。しかし、1つのメッセージが中国の人に伝わったことは間違いない。一流アスリートは、故障と紙一重のところで勝負している-。劉翔に、そんなつもりはなかっただろうけど。【佐々木一郎】




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