体操冨田、全種目で序盤に大技集める

- 北京に到着した体操の冨田(撮影・蔦林史峰)
最初の15秒で勝負を決める。体操ニッポンのエース冨田洋之(27=セントラルスポーツ)ら北京五輪男子代表6人が7月31日、北京入りした。空港では最大の強敵となる地元中国の報道陣に取り囲まれ、現地は早くも決戦ムードを漂わせた。個人総合で日本人24年ぶりの金メダルを目指す冨田は、リスクの高い技を全種目で序盤に集中させる「秘策」を用意。ノーミスの美しい体操でライバル楊威(28=中国)に対抗する。
熱い視線を受けても、表情と自信が揺るぐことはない。北京空港に降り立った冨田は、日本メディアに加えて約20人の中国人報道陣に取り囲まれた。「注目されるのはうれしいし、精いっぱい自分の演技をやりたい」。いつもと同じクールな口調だった。
地元中国からの“マーク”も当然だ。アテネ王者のポール・ハム(米国)の欠場が決まり、個人総合は05年の世界王者冨田と、06、07年の世界王者楊威との一騎打ちの様相になった。米雑誌スポーツイラストレイテッドの胡金一記者は「日本チームのリーダーがどんな調子か興味がある。楊威のライバルだから、特に注目している」と説明した。
闘志を秘めたエースの胸の内には、宿敵打倒への綿密な戦術がある。鉄棒のF難度コールマンや床運動の3連続宙返りなど、自身にとってリスクの高い技を、全種目で序盤に集めた。「僕は先に(技を)持ってきた方が集中できる。体力もある方ではないから」。精神と肉体が極限の状態を保っている間に、ヤマ場を乗り切る作戦だ。
高いA得点(技の難度)を誇る楊威に対し、B得点(技の完遂度)で勝負する冨田は1つのミスも許されない。例えば鉄棒のコールマン。演技の中盤に置いていた昨年は失敗が目立った。昨年の世界選手権でも落下して過去最悪の12位に沈み「ものすごく悔しい思いをした」。演技の序盤へと変更した今年は、1度も失敗なしの安定感を得た。
信条とする「美しい体操」をアピールできる効果もある。つま先まで足先がそろい、どんな技でも難なくこなして見せるのが持ち味。「僕は美しさで攻める」。序盤に高難度の技を華麗にやってのければ、審判の印象が変わってくる。
勝負は最初の15秒間。「思い通りの練習ができた。誰が来ようと、納得のいく演技をするだけ」。栄光の歴史を誇る体操ニッポンでも史上初となる五輪と世界選手権の個人総合2冠へ、静かに自信をにじませた。
[2008年8月1日8時57分 紙面から]
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