内村あん馬2度落下、奇跡的逆転銀/体操

- 銀メダルの内村航平は日の丸を背に笑顔を見せる(撮影・田崎高広)
<北京五輪:体操>◇14日◇男子個人総合決勝
体操ニッポンの新エースだ! 男子個人総合で内村航平(19=日体大)が大逆転の銀メダルをつかんだ。第2種目のあん馬で2度落下して24人中22位と出遅れたが、怖いもの知らずの度胸で奇跡的な追い上げを見せた。個人総合でのメダル獲得は、指導を受ける具志堅幸司監督(51)以来24年ぶり、10代では日本人初の快挙。3歳から11歳まで“貨物コンテナ”で育った新星が、次世代のエースを襲名した。冨田洋之(27)はつり輪の不運が響き4位に終わった。
「伸身の新月面」が描いた放物線は、大逆転の銀メダルにつながった。4位で迎えた最終種目の鉄棒。両足をそろえて美しい着地を決めた内村は、白い歯をムキ出しにして右手を突き上げた。「信じられない」。24年ぶり、日本初となる10代での個人総合メダル獲得。最も驚いたのは自分自身だった。
奇跡的な逆転劇だった。第2種目のあん馬で2度も落下して24人中22位。肩を落としてあきらめかけたが、森泉コーチに「アテネのポール・ハム(米国)は跳馬で失敗しても優勝した。最後まで我慢しろ」と言われて目の色を変えた。3種目終了時点で23位から、跳馬で13位、平行棒で4位に浮上。最後は2位までの0・725点差をひっくり返した。
“貨物コンテナ育ち”で培った心身が逆境で生きた。3歳だった92年、元選手の父和久さん(47)の念願だった体操教室が長崎・諫早市に完成した。予算の都合により、コンテナを4つ並べただけの質素な自宅兼練習場。風通しが悪くカビやコケも生えていたが「飛んだり跳ねたりが楽しかった」。11歳で教室が新築されるまで8年間、クッションさえないコンクリート製の床で擦り傷だらけになりながら、持ち味である体のバネが鍛えられた。
指導する具志堅監督からは「世間知らずで人間的にもまだ子供」と評される一方、怖いもの知らずの度胸が武器でもある。チョコが“主食”で野菜は一切口にしない偏食家。まじめな選手が多い現在の体操界で異彩を放つ破天荒さも魅力だ。
「自分が日本の体操界を引っ張っていける存在になれたら」。演技を終えると冨田から「おめでとう」と右手を差し出された。19歳は「お疲れさまでした」とガッチリ握り返して、エースのバトンを引き継いだ。【太田尚樹】
[2008年8月15日8時55分 紙面から]
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