石井が棟田、鈴木倒し五輪代表/柔道

- 決勝で石井(上)は鈴木から抑え込みで技ありを奪う(撮影・蔦林史峰)
<柔道:全日本選手権>◇29日◇東京・日本武道館
21歳の石井慧(国士舘大)が、逆転で北京五輪代表の座をつかんだ。準決勝で本命だった世界選手権無差別級王者・棟田康幸(27)を破り、決勝では前回王者の鈴木桂治(27)に優勢勝ち。昨秋の100キロ超級転向以来の連勝を18に伸ばした。3月下旬に負った左大殿筋断裂が完治しない状況での2年ぶり2度目の優勝で、最重量級では最年少で五輪代表に選ばれた。
優勝が決まった瞬間に流した涙が、いつの間にか笑顔に変わった。重傷を乗り越え、逆転でつかんだ五輪代表の座は最重量級最年少のオマケつき。ドーピング検査中に吉報を知った石井は「最後まであきらめずにやった。五輪に出たいとかより、オシッコを出すことだけを考えていた」と話し、笑いを誘った。
五輪本命といわれた棟田との準決勝は、お互いの技が出ず、こう着状態に陥ったが、前へ出ることだけは忘れず、勝負を決めた残り55秒の棟田への注意につなげた。3年連続同カードとなった決勝の鈴木戦は開始38秒、大内刈りから崩れ上四方固めで押さえ込んで技ありを奪取し、優勝と代表を同時にたぐり寄せた。
「対外国勢への強さ」「実績」ともに棟田が数段上にいた評価を一日で覆したのは、勝負への執着心だった。準決勝の棟田との直接対決で最大の関門を突破。決勝の鈴木戦はポイントをリードした後半、「勝負に徹したい」という言葉通り、批判覚悟で逃げ切った。6日の選抜体重別準決勝の井上戦に続き、この日の石井戦でもリードを許しながら淡々と消極的な試合運びを見せた棟田より、勝負にこだわるスタイルが評価を上げた。100キロ超級転向後の個人戦で18連勝、うち対外国勢11戦無敗という「実績」も加わり、逆転代表を呼び込んだ。
3月25日、練習中に左臀部(でんぶ)に重傷を負い、選考会を兼ねた選抜体重別を欠場した。国士舘大の山内監督は「電話の向こうでずっと泣いていた」。この日も試合後に恩師で男子日本代表の斉藤監督に「足がしびれて動かない」と明かしたほど。その限界を超えた状況下で「一発回答」を出した勝負強さ、精神的タフさも重圧がかかる五輪本番では武器となる。
「五輪に向けて? まずケガをしない。病気をしない。事故を起こさない。1本を取る技を身に付けたいし、体も一回り大きくしたい。自分の柔道を見せても、見せられなくても、五輪で優勝できればいい」。最重量級最年少代表の視線の先には、史上最年少金メダルに輝く自分の姿が映っている。【菅家大輔】
[2008年4月30日9時21分 紙面から]
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