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井上康生準々決勝敗退で引退へ/柔道

高井(左)に倒され寝技に持ち込まれる井上(撮影・田崎高広)
高井(左)に倒され寝技に持ち込まれる井上(撮影・田崎高広)

<柔道:全日本選手権>◇29日◇東京・日本武道館

 井上康生(29)は4回戦で高井洋平(25)に敗れ、引退が決定的になった。

 天井につるされた日の丸を見つめたまま、井上は動かなかった。17歳の96年、恩師でもある山下泰裕氏以来21年ぶりに高校生として出場した全日本。11回の出場で優勝3回、準優勝3回、汗と涙が染みこんだ畳の感触を味わった。「ごくろうさん」「よく戦った」。栄光と苦悩の柔道人生を閉じる井上の体を、スタンドの大歓声が包み込んだ。

 「負けたものは仕方がない。僕自身の力です」。吹っ切れたように言った。初戦となった2回戦は西山から出足払いで有効を奪って勝った。3回戦は大藤に隅落としで1本勝ちした。準々決勝の高井戦も、積極的に攻めた。力は出し尽くした。が、足りなかった。

 最後まで得意技の内またにこだわった。残り10秒から「1本をとるために」強引に仕掛けた。5歳で父明さん(61)に初めて教わった技、シドニー五輪で金メダルをとった技。井上の代名詞とまで言われた技だが、05年に大胸筋腱(けん)を断裂して以来、全盛期のキレはなくなっていた。もがいて、苦しんだ。それでも、最後は得意技を出した。

 試合前、明さんには「伝家の宝刀は相手を切りつけるためにある。切れなかったら負けだ」と言われた。切れない宝刀は透かされ、そのまま抑え込まれた。全日本では98年の決勝で篠原に抑え込まれて以来、10年ぶりの1本負けだった。結局、大胸筋は元に戻らなかった。明さんは「医者には試合に出るだけで奇跡と言われた」と、明かした。

 今後については「いろいろな人と相談して」と言葉を濁した。しかし、すでに「最後の全日本」と明言。明さんも「これが最後」と言った。将来的に目指すのは指導者の道。ロンドンへコーチ留学するプランもある。「何回もあきらめそうになった。心が折れそうにもなった。でも、やってきて良かった」。この日は涙はなかった。井上の顔には戦いきった充実感があふれていた。【荻島弘一】

[2008年4月30日9時21分 紙面から]

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