谷本オール1本で鮮やか連覇/柔道

- 女子63キロ級で優勝し、跳び上がって喜ぶ谷本歩実(共同)
<北京五輪:柔道>◇12日◇女子63キロ級
柔道女子63キロ級の谷本歩実(27=コマツ)が、五輪史上初の2大会連続オール1本勝ちで2連覇を飾った。決勝で因縁のライバル、ドコス(フランス)を内またで撃破。燃え尽き症候群や腰椎(ようつい)分離症などの苦難を乗り越え、谷亮子に続く日本女子では2人目の五輪連覇を果たした。
全身を歓喜が貫いていった。オール1本で2連覇達成。その瞬間、谷本は畳の上で小躍りし、笑い、感動の涙を流した。「うれしいです。すごくうれしいです。表彰台のてっぺんに上がるために今までやってきた」。あふれる喜びは、もう止まらなかった。
ライバルを吹っ飛ばした、会心の勝利だった。アテネ五輪以降3連敗中のドコスとの決勝戦。相手の内またをかわし、生まれた一瞬の間をついて、右の内またを放つと、ドコスは場外際にもんどり打って倒れた。「びっくりした。分からないけど体が勝手に動いた」。興奮で声が上ずった。
昨年11月、レスリングを取り入れた練習中に負った腰椎分離症という苦難が転機になった。「腰の故障は初めてで、歩けなくなり、先が見えなかった。毎日、部屋で泣いていた」。つらいリハビリ生活の日々の中で「病院で私より症状が悪い人と出会った。『あなたの復活を見ると励みになる』という手紙が届いて感動した。人生観が変わるほど長かったけど、周囲がいかに私を支えているかも分かった」。苦しい経験が精神面を成長させた。
この苦労が柔道にも生きた。所属の監督で代表では63キロ級を担当する松岡コーチは「故障をして今までの強引な攻めができなくなったから、寝技も含め、もう1度技を見直せた」と振り返った。この日の準決勝までの3試合はすべて寝技で勝利。持ち味の「1本を奪う柔道」を、立ち技でも寝技でも表現してみせた。
所属も階級も同じの妹育実(24)の存在に支えられた4年間だった。アテネ五輪金メダル獲得後、練習に身が入らない「燃え尽き症候群」に近い状態に陥った。そんな時、育実に「道場から出て行って。今までのお姉ちゃんじゃない」と泣きながら訴えられた。「泣いている妹を見て私自身が情けなかった」。金メダルを実家に送って栄光を封印し、再出発した。
柔道家としても08年全日本選抜体重別3位の実績を持つ育実の助言は谷本を助けた。「妹は技術的なアドバイスは的確で気付かされることが多い。海外勢の選手の情報もよく知っていて対策も正確」。今大会にも裏方として帯同してくれ、思いが詰まった手紙で励ましてくれた。決勝終了後、控室で号泣していた妹からの「最高の試合をしてくれてありがとう」という言葉は、谷本にとって最高の褒め言葉だった。
表彰台の一番高い場所で4年ぶりに君が代を聴きながら日の丸を眺めると、再び涙がこぼれた。「夢の舞台で隣にドコスがいる。不思議な気持ちだった。後ろで君が代を歌ってくれる人がいて、私は多くの人に支えられていると感じた」。そう話すと、歴史に名を刻んだ「女三四郎」は、晴れやかな笑みを浮かべた。【菅家大輔】
[2008年8月13日8時50分 紙面から]
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