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タイとベトナムは、生まれ変わるべきか?

2008年5月31日

 大会3日目。ようやく平穏が訪れた。

 まず、スコールに見舞われなかった。初日に突然スタジアムに登場して会場を沸かせたマーチングバンドも、ベトナム代表が登場する日であるにもかかわらず姿を見せず。ついでに観客数もここまでで最低で、メインスタンド以外はスカスカ状態。

 そして試合結果も波乱のない、順当なものに終わった。

 北朝鮮-ベトナムの第1試合は3-0で北朝鮮の勝利。今日の北朝鮮はそれほど走り回ることもなく、フリーの味方へ無難にパスを回しながら好機を伺う戦いに終始した。試合後の記者会見で北朝鮮のキム監督へ、チームにいつもの走力がなかったのはあえて指示したのか、それとも選手の疲れのせいなのかと聞いてみたところ、「グラウンドコンディションがよくなかったからね」とのこと。しかし前日にスコール直後のピッチ上で日本、韓国の両チームが見せた運動量の方がまだ多かった。驚異的なスタミナを誇る北朝鮮の選手が、より水気の少ないピッチで走れないはずはない。

sc-nadeshiko-080531-0301.jpg試合後記者会見での北朝鮮キム監督

 そこで、思い出すことがある。

 前回女子アジアカップでの準決勝、北朝鮮-中国戦。北朝鮮は圧倒的にゲームを支配しながら、中国のたった一発のカウンターで先制点を奪われた。そして終了直後、ようやく決めたと思われた同点ゴールはオフサイド判定で認められず、そのまま敗北。日本との3位決定戦に回ることになった。試合終了直後、ゲーム内容へのイライラや判定への不満が爆発した北朝鮮のGKは主審を小突いてレッドカードを受け、さらにピッチを去ろうとする主審を追い掛けて後ろから蹴りを加えようとした。これを見た中国人観衆が抗議の意味でグラウンドにペットボトルを投げ込んだのだが、そのペットボトルを数人の北朝鮮選手が拾ってスタンドに投げ返してしまう--翌日の日刊スポーツの1面にもなったこの騒動で、北朝鮮選手3人が日本との3位決定戦に出場できなくなってしまった。中でも主審に暴行を加えたGKのハン・へヨンはAFC(アジアサッカー連盟)によって、1年間の国際試合出場停止を申し渡されたのである。

 そして2年後。北朝鮮は次節のグループリーグの最終試合で、中国との対戦を控えている。前回のアジアカップで退場処分を受けたDFのソヌ・ギョンソンとソン・ジョンソン、そしてGKハン・へヨンの3人とも、今大会の登録メンバーに名を連ねた。ハン・へヨンは控えに回っているが、DF陣は今でも守備の主力選手。背番号も3人とも当時と同じままだ。お膳立ては揃いすぎている。2月の東アジア選手権でも北朝鮮は中国と対戦したが、0-0の引き分けに終わった。今度こそ同じ女子アジアカップで、あの時の3人を起用して中国に勝てば、溜飲を下げることができる。

 北朝鮮がベトナム戦で見せた省エネサッカーは、次戦に万全を期すための体力温存策ではなかっただろうか。つまりあの3人を先発で起用し、中国を完膚なきまでに叩きのめすための…。

 すみません。代表チーム同士の国際大会で、こんな安っぽい遺恨試合を目論むわけないです。第一、北朝鮮が「恨」の感情を持つとしたらあの時の審判団に対してであって、正々堂々と戦った中国に何も思うところはないはずなのだ。忠臣蔵やB級プログラムピクチャーが好きなもので、ついつい下衆の勘繰りで想像をたくましくしてしまいました。反省します。

 その中国は、第2試合に登場。タイに何度か危ういカウンターを浴びたが、終わってみれば5-1の大勝だった。この結果、北朝鮮と中国は最終節を残して準決勝進出を決めた。

 この試合で意外だったのは、中国がよく走ったことだ。前線も中盤も精力的にパスコースを作ろうとしていたし、裏を狙った飛び出しやサイドバックのオーバーラップも効いていた。もしかするとこのスタイルが、中国女子代表全盛時代の指揮官だったシャン新監督のやりたいサッカーなのかもしれない。今は主力にけが人がいるせいもあり、若手に経験を積ませているところだとのこと。初日の感想と矛盾するようだが、陣容が揃えばやはりそれなりの強さを持ったチームになりそうな気配がした。

 ただ中国の大量得点は、タイの守備組織のずさんさに助けられた部分も大きい。相手に対するマーキングやカバーリーングが徹底されておらず、中国のアタッカーがGKと1対1になる場面を度々作られていた。そして第1試合のベトナムも、やはり同じような問題を抱えていたのである。

 これら東南アジアの国は、攻撃時のパス回しやドリブルには時折きらめきを見せる。だが組織や約束事が必要になる守備で特に露呈してしまうように、チーム内の規律が徹底されていない。勝利に向かって全員の意識が統一されていないというか、まだまだ「甘い」のだ。

 こんなシーンがあった。北朝鮮との試合の終了間際、ベトナムのFWが交代を告げられた。すると彼女は、ピッチの中央あたりからゆっくり歩いてベンチに向かったのだ。残り時間は2分。点差は3点。相手は北朝鮮。常識的に考えれば望みはない。しかし仮にも国を背負ったチームなら、終了のホイッスルが鳴るまで勝利への可能性を広げる努力を続けなければならない。劣勢の側の選手が交代を告げられれば走ってピッチの外に出て、時間のロスを最小限に食い止めるべきなのだ。そんな至極当たり前のことをやろうとしないし、周りの選手やベンチも諌めようとしない。

 東南アジアの国、ことにタイやベトナムは女子サッカーにおいて近年進歩を遂げている。しかしそれでも女子アジアカップに出てくれば、まだまだ勝ち点3の供給源以上の存在ではない。両国が今以上に強い国になりたいと本気で思うのなら、より厳しい勝利への規律をチームに植え付けていかなければならないだろう。けれどタイやベトナムのイージーゴーイングなところがまったくなくなってしまうのも、一方で寂しい思いがする。中国戦の前半で0-2から1点を返したタイは、まだ負けているにもかかわらずフィールドプレーヤー全員が輪になって喜びを爆発させていた。こんな時は相手ゴール内から強引にボールを奪い取ってセンターサークルまで持ち帰り、自分達の勢いが残っているうちに試合を再開させるのが常道だ。でも「強豪の中国から点が取れた!」とはしゃいでいる彼女達の笑顔を見ていると、これもまた両チームの、そして女子アジアカップの魅力のひとつであることを否定できない自分に気付くのである。

 部外者は、いつも無責任で身勝手なことばかり言うのです。

河崎三行コラム『五輪の花へ!なでしこジャパン』

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河崎 三行(かわさき・さんぎょう)

 1965年(昭40)8月13日、高松市生まれ。港湾労働者、建設作業員、スポーツ新聞社勤務等を経てフリーランスライターに。時に自動車産業、ミシュランガイド東京版、チェ・ゲバラ、環境問題などについての記事を執筆することもあるが、主な取材対象はサッカーをはじめとするスポーツ。近年は日本の女子サッカーとオーストラリアのサッカーを継続的に追いかけている。著書に『チュックダン!』(双葉社)。




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