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飛車角落ちのオーストラリアには負けるな!

2008年6月02日

 4日ぶりに日本の練習を見た。いつもは他カードがある時間帯に行われていたので試合観戦の方を優先していたのだが、今日はグループリーグA組の最終節。2つの会場を使って2試合を同時刻で行うため、少しだけ時間に余裕がある。そこで冒頭の1時間だけだが、練習グラウンドに足を運ぶことにしたのだ。

 見た限りで力を入れていたのは、セットプレー対策。特に相手のコーナーキックの守り方の徹底に時間を割いていた。グループリーグ最終戦の相手であるオーストラリアは、とにかく大きくて強い。2トップの一角として起用されるであろうギルも、コーナーキック時やフリーキック時にターゲットとして前に上がってくるセンターバックのソールズベリも180センチ以上ある。セットプレーから、あるいはそのセカンドボールからの失点をいかに防ぐかは大きな鍵となるということだろう。

f-sc-080602-1511.jpg CK練習時、ゴール前で敵味方に分かれて激しく競り合う日本選手

 その上、マチルダス(オーストラリア女子代表の愛称。日本の「なでしこ」みたいなものです)の武器は高さだけというわけではない。この日の練習でも守備陣がふっと気の抜けたプレーをしていると佐々木監督が「それじゃあ11番にやられちゃうぞ!」と注意していたように、FWのデ・バンナは、一瞬のうちに相手DFを置き去りにできる速さを持っている。細かい足技はないが単純な縦への突進力では、なでしこ最速である荒川より上。昨年の女子W杯でも他国の脅威となっていた。つまり、世界レベルのスピードということだ。

 それでも、最終節で日本がオーストラリアに負けてもらっては困るのである。決勝トーナメントに進めないからとか、仮想アメリカ、ノルウェー、ニュージーランドであるオーストラリアに負けたのでは北京五輪が思いやられるとかいったこともあるが、理由はもっと単純だ。

 今回のオーストラリアは、主力の約半分がけがや家族の事情で登録から外れているのである。だから、メンバーには若手が数多くピックアップされている。日本代表に高校生プレーヤーが2人入ったことはちょっとした話題になったが、マチルダスには16歳の選手が3人選ばれた。10代の選手は、彼女たちを含めて5人もいる。しかもただ名を連ねているだけではない。19歳のポーキングホーン(ドリブルでの攻め上がりをたびたび見せる、足の速いセンターバック)や18歳のペリー(右サイドバック。なんと彼女は、現役のクリケット豪代表選手でもある。オーストラリアでは異なる競技で同時に国家代表に選ばれるのはそう珍しいことではないが、サッカーとクリケットという組み合わせは、オーストラリアの女性選手としては初のことだそうだ)は、今回のメンバー編成上ではレギュラーを張っている。もはやチームの立派な戦力になっているのだ。

 10代の選手たちはもちろんまだ学生だが、オーストラリアには学校スポーツの環境がない。そこで州ごとにインスティテュート・オブ・スポーツ(IS)という日本のトレセンのような組織を作り、州内の優秀選手を集めて練習を行っている。が、その練習頻度は週3回。たったそれだけのトレーニングで次々と優れた若手選手を育て上げてくるのだから、オーストラリア女子サッカー恐るべし、である。

 それでも今回のマチルダスはやはり飛車角落ちのチームなのである。そのオーストラリアにほぼベストメンバーをそろえた日本が負けてもらっては、オリンピック出場国として立つ瀬がないのだ。なんとしてでも快勝してグループリーグ突破を決めていただきたい。

 日本の練習取材を途中で抜け、北朝鮮-中国のグループリーグ最終節会場へ。場所はこれまでと違い、陸軍が所有するスタジアムだった。当然ではあるが、北朝鮮は2年前に暴行騒動を起こしたGKを使ってこなかった。遺恨試合でもなんでもなかったということです。結果は1-0で北朝鮮の勝利。点差以上に中国を圧倒した内容だった。

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ピッチに入場してくる北朝鮮(右・白)と中国の選手

 北朝鮮で目をひいた選手は、5番の右サイドバック、ソン・ジョンソン。そう、2年前にペットボトルを観客席に投げ返して次戦出場停止処分を食らった選手の1人だ。だがサッカー選手として、ピッチ上のパフォーマンスはパフォーマンスできちんと評価しなければいけない。中国戦の彼女は足の速さ、ドリブルスキルの高さ、キック力とその正確さ、守備力と、サイドバックのお手本のようなプレーを見せていた。彼女もマチルダスのデ・バンナ同様、世界レベルの選手だ。

f-sc-080602-1513.jpg 北朝鮮-中国戦のスコアを示す電光掲示板。陸軍所有のスタジアムだけに設備は簡素だ

 この試合のスタンドには、翌日に韓国戦を控えた台湾チームが見学に訪れていた。そこで、前日にも触れたエースのチェン・シューオに少し話を聞いてみることにした。

-いつもはどんなチームでプレーをしてるの?

「今、大学院に通っているのですが、その大学のサッカー部でプレーしています」

-機会があれば日本でプレーしてみたいっていう希望はある?

「(目を輝かせて)はい! ぜひ」

-なでしこリーグで知っているチームは?

「えーと、浦和レッズとTASAKIと…あと、サワさんのいるチームはなんて言いましたっけ?」

 笑顔と赤く染めた髪が印象的な女性だった。

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北朝鮮-中国戦を観戦に訪れていた台湾のエース、ツェン選手

河崎三行コラム『五輪の花へ!なでしこジャパン』

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河崎 三行(かわさき・さんぎょう)

 1965年(昭40)8月13日、高松市生まれ。港湾労働者、建設作業員、スポーツ新聞社勤務等を経てフリーランスライターに。時に自動車産業、ミシュランガイド東京版、チェ・ゲバラ、環境問題などについての記事を執筆することもあるが、主な取材対象はサッカーをはじめとするスポーツ。近年は日本の女子サッカーとオーストラリアのサッカーを継続的に追いかけている。著書に『チュックダン!』(双葉社)。




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