休養日につき、よもやま話などつらつらと
2008年6月07日
<なでしこ、ホーチミン日本人学校訪問>
準決勝を終え、大会は再び2日間のブレイクに入った。今日は勝った負けたの世界から離れた、スタジアム内外のよもやま話などを綴っていきたい。
この日、なでしこジャパンはホーチミン市郊外にある日本人学校を訪問した。自分達の街に母国の代表チームが訪れていることを知った学校側から依頼があり、チームも校庭を借りての軽いトレーニングがてら、子供達とつかの間の交流を持ったのである。
交流とはいっても、チームに訪問依頼の連絡が入ったのがわずか3日前と急だったこともあり、交歓会やらミニサッカー教室やらの本格的な催しは無理。もっぱら、なでしこジャパンの練習を児童達が見学する形が採られた。
ベトナムという土地柄の影響も受けたのか、この学校にはサッカー好きが多い。しかも最近の子供達はインターネットを駆使して日本のスポーツニュース等をこまめにチェックしているそうで、得ている情報の量も早さも日本の子供達と遜色ない。いわゆる「テレビに出てる人」が訪問するのはここ数年で初めてということもあり、なでしこジャパンはその到着から全校挙げての大歓迎を受けた。
チームの中で児童に一番人気があるのは荒川。子供達の目からは「かっこいい」と映るらしい。僅差で沢がそれに続く。残念ながらこの2人を含む前日の準決勝出場組は、もっぱらジョギングなどで疲れた体のクールダウン。子供達にはちょっと物足りなく思えたかもしれない。そんな中で大サービスしたのが、同じく前日出場組の大野だ。彼女は日頃から、ヴェルディのサッカースクールでコーチをしている。校庭の小さなトラックを何周かジョギングしているうちにその子供好きの血が騒いだのだろう、ペアを組んで走っていた柳田と一緒に、周囲を取り巻いて見学していた子供達とハイタッチを始めたのである。これには子供達も大はしゃぎだった。
この間、トラック内のフットサルコートほどの芝生のグラウンドでは前日控え組と短時間出場組がボールを使って軽めの調整を行っており、結局チームは1時間少々校庭でトレーニングを行った。
トルシエ監督時代の男子ユース代表や男子オリンピック代表は海外遠征した際、監督の意向で現地の人々と積極的にふれあいを持った。しかし女子代表が国際大会開催時、この日のようにスタジアムとホテルと日本料理店以外の場所をチームとして訪れたのは、おそらく初めてのケースだろう。
日本の監督は「集中力がそがれる」「気持ちに緩みが出る」「トレーニングスケジュールが狂う」「何かあったら大変だ」などの理由で予定外の行動をすることを嫌がる傾向があるが、自分達がどれほど期待を寄せられ、責任を持たねばならない立場であるかを選手に自覚させ、人間としての見聞を広める意味でも、大会期間中であろうとどんどん街に出ればいいのではないだろうか。第一、ちょっと外へ出たぐらいでペースが乱されるようなヤワな神経では、国際大会などとても勝ち抜けない。
同時にそれは、選手にとって格好の気分転換にもなるだろう。代表チームは試合や合宿で世界中の国を訪れるわりに、実はピッチと宿舎の往復だけで帰ってくることがほとんどだったりするのだ。
<激ウマ激安サンドイッチ>
今大会のメインスタジアムとなったトン・ニャット・スタジアムの正面入り口前には、ベトナム風サンドイッチ「バイン・ミー・ティット」の屋台がある。20センチほどの長さのフランスパンに切れ目を入れて、ベトナム風豚肉ソーセージ、コリアンダー(中華料理の香菜、タイ料理のパクチー)の葉、きゅうり、たまねぎ、ニンジンといった生野菜、生唐辛子の輪切りなどを挟み、具にベトナム魚醤ニョクマムをさっとふりかけて味付けをする。これが洋風+東南アジア風の味わいで絶品なのだ。1個10,000ドン(約66円)。2個も食べれば立派な食事代わりになる。試合日は夕食時間にゲームが行われるから、観戦しながら食べられるこいつはとてもありがたかった。
面白いことにスタジアム正面入り口の左右で別々の屋台が店を構えていて、具の中身はそう変わらないのに味がそれぞれ微妙に違う。甲乙つけがたいので僕は毎回左右で1個ずつ買っていた。双方の屋台はいわば商売敵なのだが騒々しい呼び込み合戦をするわけでもなく、おかみさんがのんびりと座って客が来るのを待っているのがなんともベトナム的。どちらの屋台でも、おかみさんの娘らしい小さな子供が横でペットボトル入りの飲み物を売っていて、「どうですか?」とはにかみながら勧めてくるのだが、ごめん、飲み物ならスタジアムの記者控え室でタダで飲めるのだよ。サンドイッチだけ買っていると、毎回自分が悪いことをしているような気持ちになってしまうからつらい。
<学生ボランティア>
今大会には市内の大学生がボランティアとして参加している。各チームの世話係として宿舎から移動バスまでずっと帯同したり、大会用IDカードの発行受付をしたり、様々なところに彼らの姿はあった。
我々が出入りする記者控え室にも、資料やメンバー表を配ったりちょっとした問い合わせに応対したりするために、10人ほどの学生ボランティアが常駐していた。この中に、大学の日本語学科に在籍する女子学生が二人いた。グェン・ティ・ホアン・ヴィさんとグェン・ティ・カム・ニュンさんである。苗字は同じだが姉妹ではない。今年の9月から2人は1年間日本に留学し、ヴィさんは千葉の、ニュンさんは大阪の学校に通うのだそうだ。偶然にも、ヴィさんが通う予定の学校は僕の家のすぐ近くだった。ニュンさんは「大阪は言葉が違うんですよね。『ありがとう』は『おおきに』でいいですか?」と心配していたので、標準語でもちゃんと生活できるからと教えてあげておいた。
記者控え室を担当する学生ボランティア。一番左がグェン・ティ・ホアン・ヴィさん、左から2番目がグェン・ティ・カム・ニュンさん
2人には我々日本の取材者が何かとお世話になったので、読者の皆さんも今年9月以降、日本で彼女達を見かけたら親切にしてあげてくださいな。




