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「手応え」を「手法」に昇華させたい豪との再戦

2008年6月08日

 いよいよ明日は大会最終日。日本は大会中ずっとトレーニングを行ってきたホーチミン市郊外のスポーツセンターで午後4時からトレーニング。

 それに先立ち、同じグラウンドで午前10時から日本の3位決定戦の相手であるオーストラリアが練習を行った。遅かれ早かれ今日行かなくてはならない場所だし、敵情偵察とまでは行かないがマチルダスが日本戦前日にどんな練習を行っているのか興味があった。オーストラリアチームの監督や広報担当が以前からの知り合いだったこともあってか練習見学の許可もすんなりおりたので、朝から出かけることに。

sc-nadeshiko-080608-0301.jpgオーストラリアのパス練習

 まず拍子抜けしたのは、2日前の準決勝・北朝鮮戦に出場した主力組がいなかったこと。宿泊しているホテルのジムで軽く体をほぐしているのだという。蒸し暑い東南アジアでの長丁場が主力組によほどこたえているのか、あるいはあらかじめ、3位決定戦は控え組に経験を積ませる場だと決めているのか。

sc-nadeshiko-080608-0302.jpgキックでボールの「壁打ち」を行うオーストラリア選手

 ただ控え組の練習も軽めのメニューに終始していた。もともとの人数が少ないため、フルコートを使っての練習は無理。ハーフコートのそのまた一部を使って5対5をやったのが一番運動量の多い練習だったが、さほど時間は費やさなかった。それも日本を意識した明確なテーマを持ってのものではなく、試合前日調整の一貫に過ぎないようだった。

 午前中は強い日差しが照りつけていたこともあってか、途中で選手達は半袖シャツからタンクトップに着替えて練習を続けたのだが、皆がピッチ上で上半身スポーツブラだけの姿になってタンクトップを着込むのにはまいった。でも男性チームスタッフも何食わぬ顔をしている。確かに欧米の女性アスリートが公衆の面前でスポーツブラだけの上半身になっている写真をよく見る。99年の女子W杯決勝では、PK戦5人目のキッカーとしてアメリカの優勝を決めたブランディ・チャスティンという選手がユニフォームのシャツを脱ぎ捨て、スポーツブラ1枚になって喜ぶ姿が話題になった(ただこのパフォーマンスは、当時スポーツブラを売り出したばかりだったアメリカチームのユニフォームサプライヤー・ナイキ社との密約があったのではとの根強い噂がある)。
しかしオーストラリアまで、ブラジャーがビキニのトップ感覚とは……。国民性の違いとはいえ、こっちが逆に目をそらしてしまった。

 トレーニングは1時間程度で終了。選手は汗をかいたままのトレーニングウェア姿で、施設内にあるすぐ近くのプールにざぶんと飛び込んだ。このプール、別に練習後のスポーツ選手のクールダウン用に作られたものではなくて、近所の子供達も泳ぎに来る一般開放施設なのだ。そこにシャワーも浴びずに入っていける無頓着さも、また国民性のなせるわざか。

 プールに入る前に選手は練習グラウンド内の椅子に座ってスパイクやストッキングを脱いでいたのだが、それを後ろから見ていると首の後ろに何やら刺青をしている選手がいる。近づいてみると漢字で「力」と書いてあるではないか。彼女は第2キーパーのリディア・ウィリアムス。昨年までU-20代表の正GKだった。ぱっと見には白人にしか見えないがアボリジニの血が入っていて、サッカーでの活躍が認められ一昨年アボリジニ女性スポーツ賞を受賞している。

sc-nadeshiko-080608-0305.jpgウィリアムスの首の後ろにある「力(ちから)」のタトゥー

 彼女に刺青の写真を撮ってもいいかと聞くと快諾してくれたので、ついでに字の意味を知っているのかと尋ねてみたら、

 「ええ、日本語で『パワー』って意味でしょう」

 この刺青、てっきり若い女性のおふざけでタトゥーシールを使ったものとばかり思ったら、本物の刺青なのだという。

 「私、クレージーだから(笑)」

 アボリジニには刺青の風習があるから、彼女にとっては何の抵抗もないものなのかもしれない。

 プールの後もシャワーを浴びるでなく、体を乾かすわけでもなく、着替えるでもなく、そのまま待っていたチームバスに直行。

 僕はこのスポーツセンターで4時間近く時間を潰して日本チームの到着を待つことにしていたのだが、それを聞いたオーストラリアのチーム広報が、

 「それじゃあ退屈だろう。うちの宿舎まで乗っていけよ」

 僕の宿泊ホテルは、女子アジア杯の選手用ホテルの近くにある。こちらもクソ暑くてだだっ広いスポーツセンターでどう過ごしていいのかわからなかったので、ありがたく申し出を受けることに。いくら顔見知りとはいえ、翌日対戦する国の取材者である。これまたオーストラリアの国民性がなせる気さくさだ(前回の女子アジア杯では同じように練習見学の後、タイチームのバスに乗せてもらって帰ってきたことがある)。

 バスの中でマチルダスのアシスタントコーチと話したのだが、オーストラリアには年間を通しての女子の全国リーグがない。年に1~2度、5、6試合程度の都市選抜対抗試合が行われるだけだという。だから代表クラスの選手はより高いレベルを求めてスウェーデンやデンマーク、アメリカなどに渡る。ただそこでもリーグ期間は3カ月程度なので、安定したプレー環境とは言えないらしい。日本の女子サッカーリーグは年間を通して行われる2部制だといったら、コーチ氏は目をむいて驚いていた。

 市内のホテルの部屋で休憩した後、再び郊外のスポーツセンターへ。昼過ぎにものすごいスコールが来たので、オーストラリアチームが連れて帰ってくれて本当に助かった。

 日本の練習は完全公開となった。主力組とサブ組に分かれての紅白戦で汗を流す。中国戦の反省を踏まえてか、佐々木監督からの指示はボールを奪う地域とタイミングについて細かな指示が飛んでいた。ただ闇雲に前で前で取ろうとするのではなく時にはリトリートし(自陣にいったん下がって)、相手にあえて持たせてボールの奪い所を限定する。そうすれば攻守逆転の確率が上がるし、中国戦のようにスタミナを浪費せずにすむ。

sc-nadeshiko-080608-0310.jpg紅白戦途中でゲームを止めて指示を送る佐々木監督(左端)

 その体力面だが女子アジア杯も大詰めを迎え、佐々木監督の目には個々の選手のコンディションのばらつきが気になるらしい。オーストラリア戦は基本的に前回のグループリーグ最終戦と同じ先発で臨むつもりだが、当日の体調によって多少の入れ替えや途中交替もあるという。

 また試合後に加藤に聞いてみたのだが、前日の夜は選手達だけでビデオを見て、ボランチの守備について
「チャレンジ(相手ボールに対してまず前へ出てボールを奪いにいく)とカバー(その後方でチャレンジした選手が抜かれた場合に備えたり、インターセプトを狙ったりする)の役割分担は、はっきりさせようと。沢も阪口も前に行きたがる選手だけど、いっぺんに上がったら真ん中にフリーになる敵の選手が出てくる。そこのバランスは取らなければいけないし、後ろのDFラインからも2人の動きに指示を出していこう」

 と話し合ったそうだ。

 さて、残すところあと1試合。つまづきながらも最低限の目標であった準決勝進出は達成し、国際試合を5試合こなすことができた。仮想欧米強豪国であるオーストラリアとの戦いでは、それなりの対応策もつかめた。明日の再戦ではおぼろげな「手応え」を確実な「手法」へと昇華させるべく、女子アジア杯最終試合を有効に使いたい。

sc-nadeshiko-080608-0307.jpgランニング中でも笑顔がこぼれる日本チーム

 オーストラリア戦には、なでしこジャパンが訪問したホーチミン日本人学校の児童達も応援に駆けつけるという。

河崎三行コラム『五輪の花へ!なでしこジャパン』

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河崎 三行(かわさき・さんぎょう)

 1965年(昭40)8月13日、高松市生まれ。港湾労働者、建設作業員、スポーツ新聞社勤務等を経てフリーランスライターに。時に自動車産業、ミシュランガイド東京版、チェ・ゲバラ、環境問題などについての記事を執筆することもあるが、主な取材対象はサッカーをはじめとするスポーツ。近年は日本の女子サッカーとオーストラリアのサッカーを継続的に追いかけている。著書に『チュックダン!』(双葉社)。




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