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日本にはなでしこリーグがある! のだが…

2008年6月10日

 女子アジア杯は終了した。なでしこジャパンは優勝こそできなかったものの、多くの収穫を得ることができた。

 中でも最大にして最高のものは、皮肉でもなんでもなく、チームが現段階で抱える課題を国際試合の中で認識できたことではないだろうか。猛暑の中でのペース配分、守備の連携、心理マネジメントも含めた試合の流れのコントロール、ゴール前での決定力、セットプレー対策など、北京五輪までに力を入れていかねばならない点が以前にも増して明確になった。しかもそれが韓国戦や中国戦での手痛い黒星という形で厳然と突きつけられたため、選手やチームはより強い自覚と危機感を持つことができた。もちろん勝てるに越したことはないが、準備段階の大会での優勝に浮かれて足元を見つめるのを忘れてしまうくらいなら、価値ある敗北に涙を飲む方がいい。照準を合わせるべきは、あくまで五輪なのだから。

 佐々木監督は代表選手一人一人に今大会で見えたそれぞれの課題を記したレポートを与え、所属チームでの練習や試合の中で取り組ませるのだそうだ。来週から五輪直前合宿に入るまでの約1ヶ月、中断していたなでしこリーグ(日本女子サッカーリーグ)の戦いが行われるのである。

 組織立った運営の下、年間を通じて試合が行われる女子の全国リーグが日本にあることは、世界のサッカー界に誇るべきことだ。だからこのコラムでも大会中何度か触れたように、なでしこリーグはアジアの女子選手や指導者から羨望や驚愕の的になっている。「日本にはなでしこリーグがある」と胸を張っていい。

sc-nadeshiko-080610-0302.jpgなでしこジャパンは五輪本番までに、充分な準備ができるのだろうか…

 が、今年がオリンピック年であることを考えると代表チーム強化のため、このリーグ日程にもう少し柔軟性を持たせることができなかっただろうか。

 というのも女子アジア杯に引き続き、来週から韓国でアメリカ、ブラジル、カナダ、イタリア、オーストラリア、アルゼンチン、ニュージーランドを招いた女子の国際大会が開かれるのである。アメリカ、ニュージーランドは五輪のグループリーグで日本と対戦する国だ。もちろん隣国の日本へもこの大会出場の打診はあったのだが、なでしこリーグの日程がすでに決まっていたために断っている。女子アジア杯に匹敵する、あるいはそれ以上の代表チーム強化の機会だっただけに、なんとも惜しまれるところだ。

 佐々木監督がいくら個々の代表選手に詳細なレポートを渡してもそれを復習、実践する場が国内リーグでは、せっかく女子アジア杯期間で得た国際レベルの身体感覚が鈍ってしまう。なでしこリーグは上位チームと下位チームの実力差が大きいからなおさらだ。

 費用や労力やスケジュール調整の面で非常に困難な作業であることは理解している。また、今年からなでしこリーグには新しい冠スポンサーがついた。金銭を伴う契約が発生する以上、自分達の都合だけで動くわけにもいかない。せっかく理解を示してくれた女子サッカーへの援助者を大切にしなければならない事情は、百も承知だ。だとしても日本協会、なでしこリーグ、所属各クラブが協力してリーグ戦日程をずらし、代表チームをホーチミンからそのまま韓国へ向かわせることはできなかったものだろうか。

 日本での女子サッカー人気は、なんといっても代表チームの五輪での戦いぶりに左右される。好むと好まざるとに関わらずトップダウンの構造なのだ。代表が五輪で好成績をあげれば大きな注目を浴び、競技の普及や認知度の向上につながる。それはなでしこリーグの各チームにとっても、益のあることなのだ。いや、益のあるといった生易しいものではなく、死活問題でさえある。一部チームを除き、多くのなでしこリーグ所属チームは経営や選手確保が楽ではない。代表にまず女子サッカー人気を盛り上げてもらった上で地元企業にスポンサーについてもらったり、優秀な選手をスカウトしてくるといった好循環を作らないと、いずれ立ち行かなくなる。

 だからこそ日本の女子サッカー全体の発展を広い視野で考え、一度決まったリーグ日程であったにせよ、もう一度代表チームに便宜を図ったものに組み替えることはできなかっただろうか。

 現在のところ、オリンピック本番までに日本が行える国際試合は2試合。それもフレンドリーマッチだ。そして残された五輪直前代表合宿の日数は、予定では20日間。果たしてそれだけで、せっかく女子アジア杯で発見できた課題を克服できるのだろうか。

sc-nadeshiko-080610-0303.jpg女子アジア杯で優勝した北朝鮮のキム監督(左)と、得点王に輝いたエースのリ・クムスク

 社会主義国家の代表チームと単純比較はできないが、今回の女子アジア杯で優勝した北朝鮮は今年に入ってから現時点ですでに50日間の代表合宿を行っている。なでしこジャパンのこれまでの合宿日数は、20日間である。

河崎三行コラム『五輪の花へ!なでしこジャパン』

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河崎 三行(かわさき・さんぎょう)

 1965年(昭40)8月13日、高松市生まれ。港湾労働者、建設作業員、スポーツ新聞社勤務等を経てフリーランスライターに。時に自動車産業、ミシュランガイド東京版、チェ・ゲバラ、環境問題などについての記事を執筆することもあるが、主な取材対象はサッカーをはじめとするスポーツ。近年は日本の女子サッカーとオーストラリアのサッカーを継続的に追いかけている。著書に『チュックダン!』(双葉社)。




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