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五輪壮行試合に見る協会のマッチメイク力

2008年6月21日

 北京五輪に出場するサッカー日本代表の壮行試合スケジュールが決まった。男女とも7月24日にオーストラリアと、同29日にアルゼンチンと対戦する。

 男子にとってはまず理想的なカードだろう。アジアのライバルであり、グループリーグの初戦で当たるアメリカに似たタイプでもあるオーストラリア。そして世界トップレベルのアルゼンチン。自分達の仕上がり具合を測るにはまたとない相手である。

 問題は女子だ。そのカードが男子と同じだと知った時、落胆とも怒りともつかない感情が湧いてきた。

 なんだろう、このマッチメイクは。なぜこの2国なのだろう。

 男子と女子の世界的な勢力図はまったく違う。女子サッカーにおいて現時点でのオーストラリアやアルゼンチンは、日本より格下の国なのだ。

sc-nadeshiko-080621-0301.jpgW杯出場を決め喜ぶオーストラリアイレブン

 なるほどオーストラリアは、日本が五輪のグループリーグで対戦するアメリカやノルウェーと同タイプだ。しかし5月から6月にかけて行われた女子アジア杯で、日本は「仮想アメリカ・ノルウェー」と見立てたオーストラリアと2度戦って2度破っている。そんな相手と2カ月も置かずに3度目の試合を行うことに、どのような意味があるのだろうか。日本選手の気分としては「もうお腹いっぱい」のはずだ。しかもオーストラリアは現在、主力選手の半数をけがで欠いている。北京五輪にも出場しないから将来を見据え、今は若手をいろいろと試している状態だ。そんな1軍半の相手に勝っても手応えは感じられないし、逆に万が一負けようものなら嫌な感情を中国まで引きずって行くことになる。

 一方のアルゼンチンは北京五輪出場国ではあるものの、昨年の女子W杯で日本が勝った相手。スコアこそ1-0と最小得点差だったが、ゲームは終始日本が支配していた。しかも現在韓国で行われている女子の国際大会で、アルゼンチンはニュージーランドに敗れている。

 北京五輪で日本と同じグループリーグに属し、その中で最弱といわれているニュージーランド(フル代表)は、今年に入ってからオーストラリアのU-19代表に完敗している。アルゼンチンは、そんなニュージーランドにさえ負けたチームなのだ。

 しかも日本が北京五輪で振り分けられたグループに、南米のチームはいない。実力的にもタイプ的にも、アルゼンチンと対戦しなければならない理由はまったく見当たらない。

 オーストラリアにせよアルゼンチンにせよ日本側が両国協会に、男子のついでに女子も一緒にどうですか、と安易に声をかけたとしか思えないのである。

 裏に様々な理由はあったのかもしれない。例えばオリンピックでの対戦国を想定した相手といろいろ交渉していたものの、先方の都合で話がまとまらなかったとか。特に7月24日の段階では、まだアジアへの移動を考えていない五輪出場国も多くあるだろう。しかしそれでもどうにかするのが、年間170億円もの予算を持つJFA(日本サッカー協会)のマッチメイク力というものだ。グループリーグでは白人主体の大柄な国が相手となるのだから、五輪に出場しない欧州の強豪国あたりを招くのが妥当な線ではなかったか。

 あるいは、と深読みしてみる。オーストラリアとアルゼンチンは「スパーリング」の相手なのかもしれない。

 試合前のボクサーのスパーリングパートナーには、必ず実力の劣る選手を選ぶ。自分の意図する通りの攻防を繰り返して体に覚えさせるとともに、敵を圧倒したという良いイメージのままで本番に臨むためだ。

 そのような相手としてオーストラリアとアルゼンチンを積極的に選択したのなら、それはそれで見識ではあると思う。

 ならば、なでしこジャパンが二つの壮行試合で示さねばならないことがある。

 切り札となるような攻め手は(対戦国に研究されては元も子もないから)五輪本番まで温存してもかまわないにせよ、最低でも先日の女子アジア杯で浮き彫りになった数々の課題は克服したことを示しつつ、完全にゲームをコントロールして快勝しなければならない。スパーリングマッチの意義はそこにある。だがそれは、強敵を相手に善戦することよりもっと難しい作業かもしれないのだが…。

 壮行、というのは「人の旅立ちを励まし、盛大に送り出すこと」なのだそうだ。しかし7月のオーストラリア戦とアルゼンチン戦を、そのような晴れやかな気持ちで見ることはどうしてもできそうにない。

 なでしこジャパンは、北京五輪で日本選手団の先陣を切って試合を行う。日の丸を背負った全種目選手の士気にも影響を与える立場の彼女達のため、本当にJFAは最善を尽くしているのだろうか。

河崎三行コラム『五輪の花へ!なでしこジャパン』

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河崎 三行(かわさき・さんぎょう)

 1965年(昭40)8月13日、高松市生まれ。港湾労働者、建設作業員、スポーツ新聞社勤務等を経てフリーランスライターに。時に自動車産業、ミシュランガイド東京版、チェ・ゲバラ、環境問題などについての記事を執筆することもあるが、主な取材対象はサッカーをはじめとするスポーツ。近年は日本の女子サッカーとオーストラリアのサッカーを継続的に追いかけている。著書に『チュックダン!』(双葉社)。




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