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「これが私の生きる道」を知る加藤の強さ

2008年7月30日

 「夏バテサッカー」

 昨日のアルゼンチン戦後、佐々木監督はピリッとしなかった日本の戦いぶりをこう表現した。

 確かに、チーム本来の姿とはほど遠かった。中盤までは面白いようにパスが回るのに、フィニッシュに結びつかない。普段なら考えられないようなパスミス、トラップミスで相手にボールを渡してしまう。選手が連動してのいつものパス回しも数えるほど。

 ただこれはもちろん、夏バテのせいではない。佐々木監督は比喩的に言ったまでで、7月中旬から始まった五輪直前合宿で相当負荷をかけた練習を続けてきたため、選手の疲労が今ピークにあるという意味なのだ。これから徐々に練習量を減らし、五輪本番に向けてベストの状態へ持っていくわけである。

 というわけでアルゼンチン戦での日本選手は先発組も途中出場組も、いかにも体が重そうだった。そんな中、いつもと変わらぬ豊富な運動量を見せていたのが加藤與惠だった。

 相手ボールホルダーへの粘り強いチャージ。敵のパスの一歩先を読んでのインターセプト。身振り手振りを交えた、周囲の日本選手への的確なコーチング。ボールを持った味方がただポンと蹴ればいいという場所でパスを受ける準備をしている、絶妙のポジショニング。30分少々のプレー時間ではあったが、彼女にしか出せない持ち味を存分に見せた。

アルゼンチン戦で味方選手に指示を送る加藤 アルゼンチン戦で味方選手に指示を送る加藤

 11年以上の代表暦を持つ彼女だが、佐々木ジャパンになってからは控えに回ることが多くなった。アルゼンチン戦前まで、今年の公式戦出場は2試合にとどまっている。一番最近の出場は5月31日、女子アジアカップ・チャイニーズタイペイ戦。アルゼンチン戦は約2ヶ月ぶりの公式戦だったわけだ。しかも試合数日前まで右脚の故障のため、別メニューでの調整を余儀なくされていた。さすがにここまで悪条件が重なると、ベテランでもすんなりとは試合に入っていけないものらしい。

「ピッチに出てすぐはボールタッチがしっくりいかなかったですね。試合勘を取り戻すのにも少し時間がかかったし」

 それでもあれだけのプレーができるのが、経験というものなのだろう。

 北京五輪出場メンバーでは沢、池田に次ぐ出場キャップ数を誇る。仕えた監督は、延べ6人。その間、代表でプレーすることへのモチベーションが落ちたことは一度もない。

「上背もパワーもない私みたいな選手は、選ぶ側の好みでいつ声がかからなくなるかわからない。だから監督が替わるたび、いつもフレッシュな気持ちで『しっかりアピールしなきゃ』と思ってプレーしてきました」

 なでしこジャパンの試合後、そのゲームのアヤがどこにあったのかを知りたいと思ったとする。普通そういう時は監督や、最後尾からチームをまとめる主将の池田に話を聞くのが普通だ。だがこの二人が他の取材者に囲まれて質問ができない時、僕は迷わず加藤のところに行って質問をぶつけることにしている。するといつも、なるほどとひざを打つ的確な答えが返ってくる。身の回りの限られた状況だけでなく、彼女は俯瞰で試合全体を眺められるのだ。

 攻守の要となるボランチというポジション柄なのかもしれない。だがそれ以上に、いつもサッカー選手としての自分の特徴を客観的に捉えてきたからこそ持てた、彼女ならではの視点であるように思うのだ。

河崎三行コラム『五輪の花へ!なでしこジャパン』

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河崎 三行(かわさき・さんぎょう)

 1965年(昭40)8月13日、高松市生まれ。港湾労働者、建設作業員、スポーツ新聞社勤務等を経てフリーランスライターに。時に自動車産業、ミシュランガイド東京版、チェ・ゲバラ、環境問題などについての記事を執筆することもあるが、主な取材対象はサッカーをはじめとするスポーツ。近年は日本の女子サッカーとオーストラリアのサッカーを継続的に追いかけている。著書に『チュックダン!』(双葉社)。




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