実は沢穂希、ヘディングだって強いんです
2008年7月31日
沢の武器はヘディングである。
そう言ったら驚くだろうか。華麗な足技やプレーエリアの広さは彼女の特徴として広く知られているけれど……。
でも、そうなのだ。沢は空中戦にも強いのである。例えば彼女の一番最近のゴールは、先週のオーストラリア戦でのヘディングシュートだった。これまで何度となく、彼女は両サイドからのセンタリングを頭でゴールに突き刺している。ゴール正面やファーサイドで待ち受けてドンと叩き込むだけでなく、ニアサイドで軽くすらせてコースを変えるヘディングシュートも難なくやってのける。ペナルティーエリア外でのハイボールの競り合いも同様だ。
彼女より背の高い選手や彼女よりジャンプ力のある選手はいる。しかし沢のようにヘディングを得意としていない場合がほとんどだ。沢の身長は164cm。決して高くはない。なのになぜ強いのか。彼女にそのわけを尋ねたことがある。答えはこうだった。
「昔、ベレーザにヘディングのうまい先輩がいたんです。その人に『何でそんなに強いんですか』って聞いたら『ヘディングはタイミングなんだよ』って答えが返ってきて。それ以来、ボールをとらえるタイミングは気にしてるかなあ……」
そしてもうひとつ、彼女はヘディングを怖がらない。大柄な外国人選手を相手にした競り合いでも彼女は素早く落下点に入り、最後まで目を逸らさずボールをヒットする。ボールも、相手選手の頭も怖がらない。
実はなでしこリーグでプレーするレベルの選手でも、ヘディングを苦手にする選手は大勢いる。相手との空中での競り合いで顔をそむけたり、背中から飛び込んでいったりするプレーヤーを見るのは珍しいことではない。あるいはボールを捉えるポイントが額ではなく頭頂部だったり。そんな中、沢のヘディング能力は群を抜いている。国際レベルでも通用する、どころか上位に位置する強さだろう。
佐々木監督が澤と阪口をボランチにコンバートした理由のひとつに、彼女達のヘディングのうまさがあることは以外に知られていない。大柄な選手をそろえた海外のチームは、日本のディフェンスラインの前にハイボールを放り込む作戦をよく使う。それを長身FWが空中戦で競り勝って落とし、シュートチャンスに結びつけるのである。日本が一番苦手にする攻め方のパターンのひとつだ。
これを阻止するため、澤と阪口には相手のハイボールを跳ね返す、あるいは仮にそれができなくてもしっかり競り合って相手の自由にさせないという役割も期待されているのである。
日本が北京五輪のグループリーグで当たるニュージーランド、アメリカ、ノルウェーはいずれも大柄なチーム。必ず体格差を利用した空中戦を挑んでくるだろう。そんな場面で日本のボランチがどれほどハイボールを跳ね返せるか。これもなでしこジャパンの試合での注目点のひとつだ。
ただできれば沢のヘディングは、自陣でなく敵のゴール前でこそ見たいのだけれど。




