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変身ノルウェーの中盤につけ入るスキあり

2008年8月12日

 秦皇島でノルウェーが戦ったアメリカ戦、ニュージーランド戦を見ていた時、必ず睡魔に襲われた。その日寝不足だったというわけではない。どちらも日本の試合を見た後の第2試合だったからでもない。今回のオリンピックにおけるノルウェーの組み立てが、恐ろしく単調なせいである。

  ボールを奪うと手間をかけず一気に3トップの両翼へ長いパスを出し、ウイングからの折り返しをゴール前で勝負。この繰り返し。ロングパス、センタリング、シュートあるいはクリア。これを執ように続けていく。しかも中盤での崩し合いというものがないから、相手もこれにお付き合いせざるを得ない。すると試合全体を通してボコンボコンと長いボールが往復する場面ばかりが目立つようになる。で、退屈のあまり眠気を催すというわけだ。

 昨年の女子W杯でもノルウェーのゲームを2試合見たが、あの時のノルウェーは今回のチームとは違う試合運びをしていた。4-4-2と4-1-4-1のシステムを使い分け、やはり両サイドからのセンタリング主体であったものの、そこにはサイドバックの頻繁なオーバーラップも織り交ぜられていた。そしてボランチはもちろん、時にセンターバックまでが攻め上がってラストパスやシュートを披露するという自在さにあふれていたのだ。ドイツに0-3と敗れた準決勝も、前半は完全にノルウェーのペースだった。オウンゴールで相手に先制点を与える不運さえなければ、勝利はどちらに転がっていたか。

 その好チームが、今は見る影もないのだ。システムは4-3-3。これは昨年の4-1-4-1からの変化(退化?)形であるかもしれないのだが、中盤の働きが大きく変わっているのだ。中盤の3人はV字型に位置して中へ絞っている。だが前の2人が前線に進出してフォワードと絡むのは数えるほどしかない(両ウイングを走らせての速攻主体だから絡みようがない面もあるけれど)。そして何より解せないのは、中盤の底の4番、ステンスランドのプレーの変わりようだ。去年は文字通り攻守の要としてチームにアクセントを加えていたのに、ここまでのアメリカ戦、ニュージーランド戦では持ち場にでんと構えてもっぱら守備専任なのである。彼女の沈黙が、そのままノルウェー全体のダイナミズムの欠如に直結している。あるいはセンターバックコンビが女子W杯時から1人入れ代わったため、中央の守備に不安を感じて攻め上がりを自重しているのかもしれない。

 ただこの変身ぶり、グループリーグ最終戦でノルウェーと対戦する日本にとっては好都合だ。敵の攻撃スタイル、つまりロングパスを受けたウイングが快足を飛ばしてのサイド突破は、もちろん日本守備陣の苦手とするパターン。しかしノルウェーのMFが中に絞って左右に広大なスペースを開けているのがポイントだ。このスペースを日本のものにできれば攻撃の主導権を握れるばかりか、敵のウイングへのパスの供給地点を潰すことにもなる。いかにノルウェーの選手にキック力があろうと、さすがにDFラインからいきなり前線にボールを蹴り込んだのでは精度の高いアタックができないからだ(ただ3トップはいずれもスピードがあるから、雑な蹴り込みでもつながってしまう可能性はある。しかし決定機につながる確率が下がることは間違いない)。

 日本のMFは4人がフラットに並んでいる。ノルウェーの中盤の両サイドに横たわる広大なスペースを攻略するには、おあつらえ向きの布陣だ。中国入りしてからコンディションの良さを維持している沢は、もちろんまた高いレベルのパフォーマンスを見せてくれるだろう。そしてアメリカ戦で精彩を欠いた安藤、阪口、宮間にしても、自分の周囲にスペースがあれば仕事をやってのけるタイプの選手。敵の『真空地帯』に入り込むことができれば、本来の力を発揮してくれるだろう。そしてDFの近賀、(矢野に代えられなければ)柳田にはオーバーラップでの援護射撃が期待できる。時にはFWの大野が下がってきて、ドリブルや細かいパス回しで引っかき回すこともあるのかもしれない。こうして敵MFを混乱に陥れ、サイドバックまでつり出すことができればしめたものだ。最終ラインのギャップを突くことにかけては、なでしこは世界に誇れるスキルを持っている。

 ノルウェーのウイングが日本の両サイドを突破するシーンと、日本のMF陣がノルウェー中盤のスペースを我がものにするシーン。そのどちらが多いかが、試合の行方を決定するだろう。相手のプレスをかいくぐり、あるいは押し戻して前掛かりになるのは勇気がいることだが、いずれにせよノルウェーに勝たないと決勝トーナメント進出の目はないのだ。臆せず攻撃的な姿勢を貫いて、なでしこならではのサッカーを見せてほしい。

河崎三行コラム『五輪の花へ!なでしこジャパン』

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河崎 三行(かわさき・さんぎょう)

 1965年(昭40)8月13日、高松市生まれ。港湾労働者、建設作業員、スポーツ新聞社勤務等を経てフリーランスライターに。時に自動車産業、ミシュランガイド東京版、チェ・ゲバラ、環境問題などについての記事を執筆することもあるが、主な取材対象はサッカーをはじめとするスポーツ。近年は日本の女子サッカーとオーストラリアのサッカーを継続的に追いかけている。著書に『チュックダン!』(双葉社)。




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