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なでしこの使命感に中国人記者も感動

2008年8月16日

 15日の中国戦には2万8459人もの観衆がスタジアムに詰め掛けた。五輪の女子サッカーでこれだけの人数が入れば大盛況の部類だ。もちろんほぼ全員が中国人。例の赤い国旗をマントのように肩にかけたり顔にペインティングをしたり、代表ユニホームを着たりと思い思いの方法で祖国とその女子代表チームへの忠誠心を表していた。ご丁寧なことにはスタンドへ通じるスタジアムゲートの入り口で、大会ボランティアたちが中国の小旗とエアスティックを無料で観客に配っていたのである。もちろん日本の国旗は1本も用意されていなかった。場外で勝手連的愛国者がやる分にはいいが、一応はオフィシャルな立場である大会ボランティアが中国の応援をあおるような活動をやっていいものなのか…。もちろん彼らは運営側からの命令に従っているに過ぎないのだけれども。

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日本―中国戦前の秦皇島オリンピックセンタースタジアム。
中国人観衆でひしめき合っている

 そうまでしてスタジアムを中国の応援一色に染め上げようえげつなさには閉口したが、中国代表をなんとしてでも勝たせるためのサポートの手厚さには、若干のうらやましさも感じないではなかった。
 ここで唐突ですが…ちょっと子供っぽい自慢話です。
 中国に「タイタンスポーツ」というスポーツ新聞がある。その新聞社の16日付の紙面に僕の談話が載りまして…。
 いきさつはこうだ。昨年中国で行われた女子W杯の時、なでしこジャパンの取材に来ていたタイタンの女性記者と知り合った。元軍人。今でも中国共産党員。日本に1度も来たことがないのに非常に流ちょうな日本語を話す。ただ生きた実地の学習をしていないので言葉遣いが少々古臭く、ばか丁寧(失礼!)なところがある。彼女がなでしこに帯同していた上田栄治女子委員長に話を聞こうと、上田氏に駆け寄って最初にしたあいさつが「上田先生でいらっしゃいますでしょうか。御高名はかねがねうかがっております」。

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スタジアムゲートでエアスティックを配るボランティア。彼らの
横では中国の小旗も観衆に手渡されていた

 今どきどんな礼儀正しい記者でも、御高名はかねがね、なんて言わない。しかし彼女は教育機関(陸軍中野学校みたいなところか?)で教わった通りの日本語でのあいさつをしたまでなのだ。
 とにかく彼女は女子W杯中なでしこにずっと張り付いていて、その間に僕と日中の女子サッカー事情などの情報交換をしていた。
 そして今回、僕がなでしこの五輪での戦いを追いかけて中国に来ていると知って、日本-中国戦の感想などを聞かせてほしいと電話でコメントを求めてきたのである。それをまとめた記事が掲載されたというわけだ。
 その記事中にも掲載されたのだが、彼女が僕の話を聞いていて新鮮に感じたのは、なでしこの選手たちは自分や代表チームのためだけに試合を戦っているのではないということだった。
 日本ではまだまだマイナー競技である女子サッカー人気を高め、現在プレーしている選手たちの周辺環境を少しでも充実したものにする。次世代を担う子供たちに、女子サッカーに対する興味を持ってもらう。そのためには日本中の注目を集める最高の媒体露出機会である、オリンピックで好成績を挙げることが最も効果的だ。だからなんとしても好成績を収めなければならない。そんな使命感を持って選手たちは戦っている―。
 これは僕だけじゃなく、なでしこの選手たちが折に触れて語っているから、少しでも女子サッカーを取材をしたことのある人間なら誰でも知っている。
 しかし中国でのスポーツ選手の常識に慣れている彼女は、なでしこ選手が抱く使命感に心を動かされたようなのだ。

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僕の談話が掲載された「タイタンスポーツ」

 「それは感動的な話です…。中国でも女子サッカーはあまり人気がありませんが、選手が考えているのは自分のことだけです。なでしこジャパンのような選手は誰もいませんよ」。
 美談仕立てのコラムにするつもりはないのだが、彼女の反応は実話である。日本戦で大勢の観衆が集まったのは女子サッカーへの関心が高いためではなく、中国という国家がオリンピックでどれだけ活躍できるかの関心に過ぎないそうだ。なるほどだから、2点目を取られた時点でそそくさと席を立つ中国人が多く見られたのだ。
 なでしこジャパンのメダル獲得まであと1勝。ここまででも大健闘だし十分日本国民へのアピールは果たしたとも言える。だがこの先メダルを取ると取らないでは、訴求力の度合いがまた桁外れに違う。
 なでしこの選手たちが自分自身で背負った使命を果たすため、北京でやらねばならないことがある。

河崎三行コラム『五輪の花へ!なでしこジャパン』

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河崎 三行(かわさき・さんぎょう)

 1965年(昭40)8月13日、高松市生まれ。港湾労働者、建設作業員、スポーツ新聞社勤務等を経てフリーランスライターに。時に自動車産業、ミシュランガイド東京版、チェ・ゲバラ、環境問題などについての記事を執筆することもあるが、主な取材対象はサッカーをはじめとするスポーツ。近年は日本の女子サッカーとオーストラリアのサッカーを継続的に追いかけている。著書に『チュックダン!』(双葉社)。




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