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試合当日午前11時現在、北京の空は雨模様

2008年8月21日

 8月21日午前11時(日本時間12時)現在、北京には雨が降っている。宿の従業員に天気予報を尋ねると、今日は一日中振り続きそうだということだ。

 まいった…。

 なでしこジャパンと欧米チームの間に歴然とした体格差があるのは言わずもがなのことだが、どこと差があるといって世界の女子サッカー界でドイツほど選手がデカイ国はない。

 準々決勝のスタメン平均身長を比べれば、なでしこの162,3センチに対し、ドイツは172,5センチ。10センチ以上も高いのだ。しかもセンターフォワードのプリンツ(179センチ)や右アウトサイドのガレフレクス(180センチ)などは速く、足技もある。他の選手も止める、蹴るといった基本技術はしっかりしている。

 それだけではない。五輪直前、ベテランの加藤にインタビューしていた時だった。彼女は現在のなでしこの中で1、2を争う分析力、戦術眼の持ち主なのだが、ドイツについての話題になった時にこう言ったのだ。

 「アメリカ相手なら、私達が充分対抗できるって気がするんですよ。でもドイツは…去年の女子W杯で当たった時に『これはちょっと差があるな』って感じましたね。身体能力や技術の差はもちろんなんですが、選手全員がサッカーをよく知ってる。後から聞いたんですが、ドイツの選手は全員がドイツ協会公認の指導者資格を持ってるそうです。『だからなのか』って納得しました」

 このまま予報どおり雨が降り続いて重馬場になれば、もちろんパワーとスピードがあるドイツが有利だ。スペースにボールを蹴りこんでヨーイドンの競争で快足選手を走らせれば日本選手に勝ち目は薄い。走りこんだ選手がセンタリングを上げ、ゴール前で待ち受ける長身選手がヘディングを突き刺せば一丁上がりだ。日本の細かいパス回しは水気を含んだ芝にボールの勢いをそがれ、いたるところでインターセプトの餌食になる。

 あるいは仮に工人体育場のピッチが上海体育場のような抜群の水はけを持ち、互いの持ち味を生かせる状態だったとしても、日本がドイツのダイナミックな展開を凌駕できるかどうか…。

 探せば、希望の持てる材料も少しはある。

 まずは以前のこのコラムでも登場したオーストラリア代表監督、セルマンニ氏が五輪前のインタビューで語った言葉。

 「アジアの国は、連戦が続いても極端にパフォーマンスが落ちないという特徴がある。これは無視できないアドバンテージだよ」

 中2日での6戦目とあって、なでしこの選手は誰もが疲労の蓄積を口にしている。しかし中国の気候の中での連戦がよりきついのは、ドイツのはず。絶対的な高さや速さではかなわないかもしれないが、俊敏性や持久力を生かしたハードワークを続ければ、何かが起きるかもしれない。

 そして日本との準決勝後の、アメリカチーム監督の談話。

 「今晩の試合で日本が見せたポゼッション・フットボールは、未来の女子サッカーのお手本だと思う」

 相手を称えるリップサービスの意味合いもあっただろうが、確かに前半途中までFIFAランク1位のアメリカが手も足も出ない時間帯を作っていたのだ。それを昨年女子W杯王者のドイツ相手にできないと誰が言えるだろう。

 希望、という言葉を使いながら<何かが起きるかもしれない>とか<できないと誰が言えるだろう>とか、自信なさげな物言いなのが我ながら情けない。しかし正直なところ、試合当日の空模様がきっかけになったか、今の胸中は弱気の虫にすっかり支配されてしまっている。映画『ロッキー』で、桁外れの強さを誇る世界王者アポロ・クリードとの対戦を翌日に控えた主人公が、恋人のエイドリアンに

 「だめだ…勝てない」

 と弱音を吐いた時のような心境だ。

 が、ロッキーはただの負け犬になるのを甘んじて受け入れることも拒んだ。彼はひとしきり勝負の行方を悲観した後、ぽつりと、しかし決然とこう言ったのだ。

 「試合に…負けてもどうってことない。脳天が割れてもいいさ。最後までやるだけだ。相手は世界一なんだ。最後のゴングがなってもまだ立ってられたら…俺がゴロツキじゃないことを…初めて証明できるんだ」

 もちろん、なでしこの選手たちは以前も今もゴロツキなどではない。そしてこの北京五輪で、自分達が何であるかをすでに充分すぎるほど証明している。

 だからあとはドイツ戦の試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、結果がどうあってもいい、日本の、なでしこのサッカーを出し尽くしたと選手達がきっぱり言い切れるような戦いであってほしい。

 いや…違う。そんなきれいごとですませてはいけない。

 なでしこジャパンの選手は今夜も、勝つために戦う。一介の観戦者が試合前から「結果がどうあっても」などと逃げ口上を打つのは、彼女達に対して失礼というものだ。

 僕もタイムアップの瞬間まで、日本の勝利を信じ続けることに決めた。

河崎三行コラム『五輪の花へ!なでしこジャパン』

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河崎 三行(かわさき・さんぎょう)

 1965年(昭40)8月13日、高松市生まれ。港湾労働者、建設作業員、スポーツ新聞社勤務等を経てフリーランスライターに。時に自動車産業、ミシュランガイド東京版、チェ・ゲバラ、環境問題などについての記事を執筆することもあるが、主な取材対象はサッカーをはじめとするスポーツ。近年は日本の女子サッカーとオーストラリアのサッカーを継続的に追いかけている。著書に『チュックダン!』(双葉社)。




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