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なでしこのファンを幻滅させてはいけない

2008年8月23日

 女子サッカーの競技日程はすべて終了。なでしこジャパンはゆっくり休養をとる暇もなく、3位決定戦翌朝には帰国の途についた。

 選手達は成田に着くやフラッシュの嵐を浴びたそうだが、それはまだ序の口。日本女子サッカー史上初の世界大会4強入りを果たした彼女達にはこれから新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどの取材攻勢が待ち受けていることだろう。

 あるいは取材だけでなく、今後テレビのバラエティー番組などに出演する選手も出てくるのかもしれない。

 それがオリンピックというイベントで好成績を残すことのすごさであり、怖さだ。

 そこで心配なのが、自分を見失ったりしないかということ。オリンピックのヒーロー、ヒロインとメディアに持ち上げられるだけ持ち上げられて舞い上がり、競技生活や人生そのものまで狂わせてしまったアスリートは少なくない。なでしこの選手から一人たりともそんな被害者が出てもらいたくないのだ。

 テレビに出て人気タレントと画面に収まるのは、魅力あることかもしれない。私生活やオリンピックでの裏話をあけすけに語ってスタジオの笑いを誘うのは、快感かもしれない。しかしそれとひきかえに、オリンピックでのなでしこに心動かされた人達がどれほど幻滅するかを忘れてはいけない。古臭く、堅苦しい考え方のようだが、サッカー選手が自分を表現する場は、まず第一にピッチの上なのだ。

 せっかく北京五輪という大舞台で女子サッカーの素晴らしさをアピールできたのだ。それを自らの手で貶めては意味がないではないか。

 今月末には東京・西が丘サッカー場でなでしこリーグオールスター戦が行われる。日頃応援してくれるファンへの感謝の念は、こうした場でこそ大いに発揮してもらいたい。もちろん北京五輪代表も半数以上出場するが、蓄積疲労から大きなけがなどしないよう、充分気をつけてほしいものだ。

 なでしこリーグと言えば。

 北京五輪での日本女子代表の奮闘に感銘を受けた日本サッカー協会の犬飼会長が、Jリーグ全クラブが女子チームを持つべきと語ったそうだ。実現すれば、素晴らしいことだと思う。クラブ運営や強化のノウハウを持っているプロクラブが参入すれば、普及・強化の両面で女子サッカー界が充実するだろう。

 が、事はそう簡単ではない。犬飼会長は自身が球団社長を務めていた浦和レッズのレディースチームを念頭に置いているのだろうが、レッズが女子チームを維持し、一部の選手とプロ契約まで結べるのは、男子チーム関連で稼ぎ出す巨額の収入があればこそなのだ。

 女子サッカーチームは、金を生み出さない。入場料収入も、関連グッズの収益もほとんど見込めない。そのくせチームや試合の運営に人や時間が取られる。生み出さないどころか金食い虫である。それでも女子チームを維持し続けるには、クラブの資金的体力と愛情と信念が必要だ。

 Jクラブの内情はそれぞれ違う。レッズのように億単位の黒字を計上できるところもあれば、火の車の台所を何とかやりくりしているところもある。女子サッカーに対する理解度もまちまちだ。それを一様に女子チーム部門を持てというのは、少し乱暴に過ぎないか。

 もちろん、水準の高い女子チームが増えるに越したことはない。Jクラブが女子チームを持てば、何かと好都合だ。であればそれはできるクラブ、やる気のあるクラブから逐次始めていけばいいのではないか。何も横並びで強制する必要はない。

 またJクラブの参入は、細々と運営し続けてきた地方の市民クラブや、好不況に関わらず選手の雇用まで確保しながらチームを維持し続けてきた企業クラブを無下に切り捨てるようなことになりかねない。もちろん競技スポーツだから生き残れない弱者は去るべきなのだが、脚光が当たらない時代から懸命に女子サッカーを支えてきたクラブに対する敬意や感謝の念を忘れるべきではない。Jのクラブが女子チームを持ってなでしこリーグに直接参入するより、こうした女子クラブとJクラブが提携関係を持つ方が、お互いにとって益が多いのではないか。

 豪腕と評価される人物は、弱き者の痛みや苦しみに思いが到らないものだ。しかし犬飼会長はその数少ない例外であると、僕は信じたいのだが。

河崎三行コラム『五輪の花へ!なでしこジャパン』

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河崎 三行(かわさき・さんぎょう)

 1965年(昭40)8月13日、高松市生まれ。港湾労働者、建設作業員、スポーツ新聞社勤務等を経てフリーランスライターに。時に自動車産業、ミシュランガイド東京版、チェ・ゲバラ、環境問題などについての記事を執筆することもあるが、主な取材対象はサッカーをはじめとするスポーツ。近年は日本の女子サッカーとオーストラリアのサッカーを継続的に追いかけている。著書に『チュックダン!』(双葉社)。




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