オシム教え子の水本涙止まらず/五輪予選

- 鼻骨を骨折しているMF水本はフェースガードでカバーしプレー
<北京五輪最終予選:日本0-0サウジアラビア>◇C組◇21日◇国立
両手を突き上げ、天を仰いだ。北京行きを告げる試合終了の笛。水本はガッツポーズのままピッチに崩れ落ちた。「ぜったい泣かないと決めてたんですけどね」。抱き合う戦友たちの傍らで、両手で顔を覆って動かない。GK西川らに促され、ようやく歓喜の輪に。フェースガードのすき間から、目を何度もぬぐった。
普段は若さに似合わず、冷静そのもの。だが緊張の糸が張り詰めていた分、感情が涙としてあふれ出た。ロスタイムのサウジアラビア攻撃陣の猛攻。鼻骨骨折を省みず体を張って守った。ゴールキックを得ても、一息つく味方に「すぐに上がれ」と厳しく促した。
左腕には選手・スタッフの寄せ書き入りのキャプテンマーク。責任感が水本を駆り立てた。だがそれと同時に、病床の恩師への思いも。16日、日本代表オシム監督が脳こうそくで緊急入院した。一報をベトナムで受けた水本は、周囲の選手が心配するほど、ショックで顔色を失ったという。
オシム監督は誰よりも早く水本の才能を認め、厳しくも温かく導いてくれた恩師。プロ入り当初から同監督は友人に「経験豊富な中沢、坪井と比べても、水本はそん色ない」と明言していた。故障さえなければ今夏のアジア杯のメンバーにも入れる予定だった。そして南アフリカW杯で、守備の要にすえるはずだった。
そんな恩師が病魔に倒れた。水本は喪失感から懸命に立ち直った。「今できるのは、五輪出場権を勝ち取って監督にいい報告をすること」。17日ベトナム戦で4―0と快勝しても、緊張感を緩めなかった。「これで終わりじゃない。次も勝たないといい報告ができない」と繰り返した。
「今日も昼寝をしたら、監督が出てきました」。名将は遠い無言の病床にあってもなお、教え子の励みになっていた。無形の後ろ盾を得た水本は、緊張を切らさず最終予選を完走。6試合2失点の堅い守備で、攻撃不振のチームを支えた。
それでも水本は「監督が元気だったら、まだまだダメだと言われる」。オシム最大の教えは「休みから得られるものはない」。少しだけ歓喜に浸った後は、さらなる向上を目指さねば―。オシムチルドレンは、たゆまぬ努力こそ病床の恩師に報いる道だと知っている。【塩畑大輔】
[2007年11月22日9時48分 紙面から]
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