シリアより日本を応援?/中東サッカー

- 06年12月ドーハアジア大会での日本-シリア戦(撮影・宇治久裕)
北京五輪アジア2次予選の第3戦(3月28日)がアジア各国で12試合行われるが、アラブ世界にネットワークを持つARTではそのうち8試合をライブで放送する。日本-シリアもその8試合に入っており、放映時間も湾岸ではランチタイムにあたるのでチャンネルを合わせる人は少なくないだろう。
アラブ諸国の1つであるバーレーンの人々は、当然、シリアを応援する…と日本のファンは思っているかもしれない。それはまあ、正解とも言えるし、不正解とも言える。
こういったアラブ系の国(シリア)対その他のエリアの国(日本)といったカードを湾岸で観戦する際、その場に居合わせた現地の人はアラブ系の国を応援することが多く、それは半ば“お約束”になっている。特に喫茶店などでアラブ諸国の人が入り乱れて見ている場合には「マナー」と言ってもいい。当然のようにテレビのアナウンサーも例の絶叫型の応援をアラブのチームに贈る。
ところが一筋縄ではいかないのが、アラブ世界だ。
以前の記事で中東地域における軍事・経済・文化などの地域協力機構である湾岸協力会議(GCC=Gulf Cooperation Council)諸国内の人的交流が非常に多く、いざとなったときの結束が比較的固いことを紹介した。GCCとはサウジアラビア、バーレーン、カタール、クウェート、オマーン、UAEの6カ国のことだ。だが、GCC諸国と近隣の非GCC諸国と言っていいレバノン、シリア、ヨルダン(以下レバシリ諸国)との間にはちょっとした溝がある。
バーレーンにはかなりの数の出稼ぎシリア人がおり、バーレーンのパスポートを取得しているシリア出身者が多数いる。筆者の友人のジャファが以前勤めていた学校はこういったシリア系バーレーン人子弟がほとんどの学校だった。バーレーンにおける失業問題や低所得問題(オイルリッチのイメージとは違い月給250BD=8万2000円程度の人はざらにいる)は深刻で、こういった問題の原因の1つにシリアやイエメン、ヨルダン(パレスチナ系がほとんど)などからの移民や出稼ぎが多すぎることをあげる人は多い。
話をサッカーに戻すと、W杯ドイツ大会のアジア1次予選でバーレーンとシリアは同じグループで1つのいす(=最終予選進出権)を争った。バーレーンの首都マナマでのバーレーン-シリア戦(04年2月18日)では、こういったシリア系バーレーン人はシリア側のスタンドに行って出身国を応援したのだが、こういった行為もバーレーン人にとってはあまり愉快なことではなかった。
バーレーンとシリアの関係は少し極端な例ではあるのだが、いずれにせよレバシリ諸国からGCC諸国への経済的、政治的理由による人の流れがあり、この両地域の人々の関係は必ずしも良好とは言えないのが現実だ。
前回のアテネ五輪アジア最終予選。全6戦のうちの5戦を終えた時点で日本とバーレーンが勝ち点で並び、最終戦がUAE-日本、レバノン-バーレーンとなった。アラブ包囲網で日本は「バーレーンがレバノンの協力を得て大量得点で勝ち、出場権を持っていかれるのでは」との心配から、マスコミがレバノンのハムード監督に「(レバノンにとってはただの消化試合になる)最終戦を、まじめに戦ってくれるのでしょうか?」といった質問をしたという。レバノンがまじめに戦ってバーレーンと引き分けてくれたのも、この両地域に横たわる、ある種の溝と無縁ではなかったと筆者は考えている。この時、バーレーンのシェリダ監督は試合前、すでに予選敗退が決まっていながら、やる気満々のレバノンチームを見て「同じアラブの国なのに、なんでこの試合だけ頑張るんだ?」と通訳にボヤいたということが、日本でも報じられた。本当にアラブ世界は難しい。
さて、3月28日の日本-シリア戦でバーレーン人がどちらを応援するか、という問題。ゲーム中は“お約束”のアラブへの応援はあるだろうが、日本が勝てばシリアの敗戦に上機嫌のバーレーン人から「祝福の握手をたくさんもらえる」が正解だろう。
理由はどうあれ、日本代表にはバーレーンからバーレーン人の声援があることを感じて戦ってほしいものだ。【バーレーン=海島健通信員】
[2007年3月27日22時14分]
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