李が日の丸初ゴール/五輪予選

- ゴールを決めたFW李は指を立てて駆け出す(撮影・鹿野芳博)
<北京五輪アジア2次予選:日本2-1マレーシア>◇B組◇14日◇マジリス・バンダラン・ペタリンジャヤ競技場
【クアラルンプール14日=山下健二郎、奈島宏樹、広重竜太郎】この日を待っていた! U-22(22歳以下)日本代表のFW李忠成(21=柏)が、待望の日本国籍取得後初ゴールを決めた。マレーシア戦で、1-0で迎えた後半30分から途中出場。1分後にMF家長の折り返しを詰めて、追加点を挙げた。後半38分に1点を許したため、結果的には「決勝弾」の値千金のゴールとなった。在日韓国人4世ながら2月に国籍取得した秘密兵器が、日本の勝利に貢献した。
李は心の中で必死に念じた。「来い! 来い!」。ピッチに投入されてから1分後の後半31分。右サイドを突破したMF家長から、パスが来るのを信じてニアに走った。水しぶきを上げて転がってきたボールを、利き足と逆の右足で押し込む。「これから一生、サッカーを辞めても誇れるゴール」。在日韓国人4世・李から「日本人・李」となって34日目で生まれたゴールは、李の胸に、永遠に刻まれる1点となった。
ゴールをささげたい人は、無数いた。ゴールパフォーマンスで両手を大きく回してメーンスタンドに陣取るサポーターをあおった。「いろんな人にゴールをあげたかった。チーム、日本のサポーター、そして在日韓国人の方に、夢と希望を届けたかった」。そして視線の先には両親がいた。母裕美さんは16日が48歳の誕生日。「スタンドにいるかなと思ってパフォーマンスをした」と笑みを浮かべた。
もう後がなかった。米国との親善試合、五輪予選初戦の香港戦に先発するも不発。香港戦後の父鉄泰さんへの第1声は「ゴメン」。だが甘い言葉は返ってこなかった。「お前、次はないよ」。代表生き残りが容易でないことを、あらためて知らされた。
そんな両親がこの日、遠路はるばるマレーシアまで訪れたのには理由があった。「代表で海外で試合に出るのは最後になるかもしれないから」(鉄泰さん)。その思いは李自身も、くみ取っていた。「自分はこれで呼ばれなくなっても代表が最後ではないと思っていた。でも両親は国籍の取得を積極的にやってくれたから」。恩返しのゴールだった。
失う物はなかった。柏ではU-22代表候補のFW菅沼に先発の座を奪われた。マレーシア戦でも先発落ちするのは薄々、覚悟していた。だが失意はなかった。「途中からでも流れを変えてチームに貢献したい」。準備にも最善を尽くした。香港戦では何度も足を滑らせた。日本代表オシム監督が「何であんなに滑るんだ」と関係者に漏らしていたことも伝え聞いていた。この日は普段、履かない取り替え式のスパイクで臨んだ。「もう滑れませんから」。腰を落として踏ん張り、代表生き残りにも合格した。
反町ジャパンにとって五輪予選、最初のアウエー戦は2-1。結果的に李の2点目は大きな意味をもたらした。「次も先発じゃないかもしれない。でも途中からでもチームのプラスになるのならば、それでいい」。李の言葉は、日本代表の自覚と誇りに満ちあふれていた。【広重竜太郎】
[2007年3月15日9時17分 紙面から]
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