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北島「ちょっと悔しい」金…引退へ/競泳

金メダルを胸に場内一周をしていた北島康介は目頭を押さえる
金メダルを胸に場内一周をしていた北島康介は目頭を押さえる

<北京五輪:競泳>◇14日◇男子200メートル平泳ぎ決勝

 北島康介(25=日本コカ・コーラ)が、五輪史に金字塔を打ち立てた。男子200メートル平泳ぎ決勝で、2分7秒64の五輪新記録で金メダルを獲得した。自身の持つ世界記録には0秒13及ばなかったが、2位リカードに1秒24差をつける圧勝で、平泳ぎでは五輪史上初の2大会連続2冠の偉業を達成した。レース後は今大会を最後に第一線から退く意向を示唆。17日のメドレーリレー決勝が現役最後のレースとなる可能性が高くなった。

 電光掲示板を見た。北島は大きくため息をついた。世界新に0秒13だけ足りなかった。連続2冠達成の歓喜より先に、悔しさがこみ上げてきた。少し遅れて右手でガッツポーズ。その直後に今度は首をかしげた。プールから上がった第一声は「記録が出なくて、ちょっと悔しい」。歴史的偉業達成も、もの足りない。それほど北島の強さは、異次元の域に到達していた。

 ライバルは記録だけだった。スタートから先頭を譲らなかった。競泳界に革命を起こした、大きく、伸びのある芸術的な泳ぎで、ひとかきごとに、前へ飛び出した。150メートルのターンまで自己の世界記録を上回るハイペース。2位以下を体ひとつ分も引き離した。しかし、競り合う相手がいない分だけ、終盤の伸びを欠いた。「2分6秒台が出ると欲を持って臨んだのがよくなかった」と反省した。

 競技人生の集大成。そう心に刻んでスタート台に立った。2冠連覇を目指して北京に来た。まず100メートルを世界新で制した。200メートルは個人種目で、人生最後のレースになる可能性が高い。「2連覇が目標ではなくて、ただ単に最高の自分を表現できればいい」。平井コーチの「日本人が勝つには世界一の技術が必要」という考えのもとで完成させた、誰もまねできない「美しい泳ぎ」で、有終の美を飾るつもりだった。

 平泳ぎでの2大会連続2冠は、五輪史上初の偉業だった。他の種目より水の抵抗を受ける分だけ、力と技術の微妙な融合が要求される。この4年、北島も苦しんだ。国内でも負けて「五輪が見えない時期があった」。06年夏には引退も頭をよぎった。だが同年秋から2年計画で基礎からつくり直した。「力みがない。あんな泳ぎは見たことない」と古橋広之進・日本水連名誉会長も絶賛した。

 この4年間は競泳界のパイオニアとしての自負が強かった。05年に日本初のプロスイマーになり、水泳の地位向上に努めた。今年はミズノと個人契約がありながら、真っ先に英スピード社の高速水着レーザー・レーサー着用を宣言。日本チームの主将として臨んだ今大会は、合宿から若手に自分から声をかけた。自分の戦う姿を、次代を担う若い選手たちに、しっかりと目に焼き付けてほしかった。

 試合後、平井コーチは「他のコーチたちとも『最後かな』と話していた。五輪でなければ、なかなか燃えられないと思う。次(ロンドン五輪)は30歳。休むと体も硬くなる。今日も、これで200メートルを全力で泳ぐのが最後かと思って見ていた」と涙ぐんだ。同コーチの様子を聞いた北島も「僕もそのつもりでやってきた。(北京に)入る前からさびしい気持ちはあった。コーチには『ありがとうございました』と言いたい」と、静かに第一線から退く意思を明かした。

 アテネ五輪後とは違い、北京五輪後のレース予定は一切入れていない。「(年齢的な)タイミングも(五輪開催と)合って、本当に運がある。泳ぎを楽しもうと思っていた。いいレースができました」。レース直後こそ悔しがっていたが、最後はすがすがしい顔になっていた。【高田文太】

 [2008年8月15日8時55分 紙面から]


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